嘘から生まれたボク Ⅰ (ページ32)

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玉森side

玉｢スマホ届けに来た｣

池｢スマホ？…ああ、俺忘れてたんだ？｣

玉｢もうセリフ頭に入ってるんだ｣

池｢セリフはね、他は全然｣

玉｢いや十分すごいよ｣

台本を貰って、まだ2週間も経ってない。

2幕もあるし、座長だから

それなりにセリフも多いはずだ。

池｢記憶力はいいと自負してる｣

くすっと笑ったAにつられて俺も笑う。

池｢水ありがと、貰うね｣

玉｢うん｣

ペットボトルを開けて水をごくごくと飲むA

すごい汗…

効果音を付けるなら

宮田みたいにべちゃべちゃって感じじゃなくて

少女漫画の王子様のようなキラキラって感じ。

汗でさえ、いい香りがしそうだ。

これぞアイドル。

玉｢じゃあ用済んだし俺帰るね｣

池｢ん、わざわざありがとね｣

玉｢いいえ、頑張って｣

Aにスマホを渡し終えた俺は

居続ける理由がなくなってしまって

出口の方へ足を向けた。

ふと、振り返る。

玉｢…どした？｣

Aは俺を見てぼーっとしていた。

池｢何でもない｣

Aは俺に手を振った。

俺も振り返す。

.

なんで俺はこの時…

Aの異変に気付いていたのに

それを追求しなかったんだろう。

.