ただ、そばにいたいだけ。【銀魂】 (ページ38)

今日:4 hit、昨日:0 hit、合計:19,920 hit

38 ページ38

『よろず、や…』

いつもとは違う、ドスの効いた声。強く睨みつける赤い瞳。

「仮にも女だぞ。女にそんな口聞くたァ、テメーらホントに男か。

いや…人間か？

テメーら、新見のなんも知らない癖に、江戸を守れねぇだ？

テメーらこそ半端なこと言ってんじゃねェ。コイツはまぐれで生きてんじゃねぇんだよ。それだけの実力があるんだよコイツには。

そのきっっったねぇ口で、新見を騙るんじゃねぇ」

静かな口調で、男達を睨みつける銀時に怯え、「ひ、ヒィイイ！」と悲鳴を上げながら2人は走り去っていった。

木刀を戻し、「オイ新見。平気か」と振り返る。

「……新見お前、…何、泣いてんだよ」

『泣いてねーし。目が汗に染みただけだし』

「反対じゃねそれ。…あ、動揺してんの？」

『…』

俺は泣いているらしかった。
銀時の優しさが嬉しかったからだろうか。

「アイツらがなんか泣かせるようなこと、言ったのかよ」

『言ってねぇけど…やっぱ、そういう俺を悪く思う奴も、いるんだなって思って。

やっぱ俺みたいな奴は、真選組にいちゃ行けないのかなって…俺みたいなやつは、生き残っちゃ行けないのかなって…っ!?』

「んな訳ねーだろ。バッカじゃねーの、お前。

真選組の事ァ知らねーけど、誰もお前がいなくなること望んでないと思うぜ。

それに……お前が生きてくんねぇと、いい財布がいなくなる」

俺は、銀時に抱きしめられていた。

静かに本音を漏らし続ける俺の背をぽんぽんと優しく叩き、これまでにないほど優しい声音。

俺には、今こうやって、人の体温に当たるのが必要だったのかもしれない。
ボロボロになっていた心が、少しづつ暖かくなっていく。

『…ぅ…ぅああっ…ぎんと、き…！』

そして、抑えていた涙が、一気に堰を切ったように溢れ出した。銀時と言ってしまってたことなんて、もうどうでもよかった。

俺はそれからずっと…銀時の胸の中で泣きじゃくっていた。まるで、…子供のように。

銀時はその間、ずっと背中を叩き続けてくれた。最後らへんちょっと痛かった。

俺は…そんな不器用な優しさを持つ銀時に…いつの間にか、本気で惚れ込んでしまったみたいだ。