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ある日、沖田と見回りをすることになった。

「新見さん…腹すきません?」

『空きませ…いややっぱ空くね。ちょっとあそこの団子屋で休憩しようか』

「さすが新見さん、俺の頼れる上司でさァ」

そんなに褒めるなって、照れるだろ。

沖田といるとこんな風に悪い方向へ向かっていき、後々土方さんにこっぴどく叱られるのだが、直せない。否、直したくない。

沖田が人知れず黒い笑みを浮かべていることも知らない。

途端、空気を揺るがすような金切り声が聞こえ、俺達2人はその声のした方へ向かった。

そこには怯えたように蹲る女性が。

「あ、…お巡りさん…!ひったくりです…!」

そう紡ぐ女性は沖田に任せ、俺は犯人が向かったと思われる場所を駆け抜けた。

そのまま進むと、ある男が、女物のバッグを持ち駆けていた。俺はそのまま加速し、男に先回り、案の定鉢合わせし確保した。

『ホイ、お嬢さん。お持ち物だぜ』

「……ありがとうございます……!!!この恩は一生忘れません…、私だけの王子様…!」

恍惚とした表情で、俺を見つめる女。

『王子様なんて言い過ぎだろ、はは。じゃ、これからも気をつけろよ。行くぜ沖田』

「へい」

「……」

女は、気持ち悪いくらいに笑顔で俺を見ていた。




「新見…ちょっとこい」

翌日、土方さんに呼ばれて俺は土方さんについて言った。

向かい合い、土方さんは俺の目の前に山積みの封筒をばらまいた。

「この手紙、全部お前宛てだ。真選組のポストにたんまり入ってた…」

『うへぇ……!?』

50通以上はあるだろうか。
それくらいの手紙が、俺に。

「しかも中身みてみろ」

『え…』

嫌な予感を抱きつつ、恐る恐る読んでみる。

【好きです、宇宙の誰よりも】
【あなたをこんなに愛しているのは私だけ】
【新見さんは私だけのものです】

【すきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすき】

ざっくりすると、こんな感じのが、50通以上来ているのである。
名前教えてないのに、新見さんって…。

すきすき…のとこなんていや、山崎かよ。あんぱん。

もう、…恐怖。

「…ま、これは悪質なファンの仕業だろ。こういうのはほっときゃあいつか収まる。無視していいぞ」

『え…でも…』

「いいんだよ。こういうことする奴程構うとエスカレートすんぞ」

ごもっともな意見に、俺は引っ込むしか無かったのだった。

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作者名:グミ | 作成日時:2019年11月16日 18時

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