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♦︎♢♦︎
「貸していただいてありがとうございました」
「え？もういいの？」
昼間のカフェテラス。
紙袋に何冊も入った本を蝦夷森さんに向けて差し出しすと、蝦夷森さんは「そんなに急いで返さなくていいのに」と、そう言ってから受け取った。
「やっぱり、私にはちょっと早いみたいです」
「ってことは、了とは進展がなかったってこと？」
私は、少し恥ずかしくて蝦夷森さんの言葉に、下を向いて頷いた。
膝に置いていた両手に力が入って、せっかくのお気に入りのスカートを思わず握りしめてしまい、皺が入る。
了君──リヴァイ君と付き合いだしてから、彼とのキスや軽い触れあいはあるものの、そのさきが未だにない。
何度もそういう雰囲気にはなるのに、いつもリヴァイ君は、ここまでだ。とでも言うかのように、途中でやめてしまう。
綺麗好きな人だから、もしかしたらそういうコトが苦手なのかもとも考えた。
だけど、そういう時、仕掛けてくるのは大体リヴァイ君の方からで……
それに、私にも彼がその先を止めてしまう原因に一つだけ心当たりがあった。
前に一度、一線を越えそうになった時に、彼の行為を拒むように止めてしまったことがある。
その時の、リヴァイ君の長く深いため息は今でも覚えている。
……もしかしたら、それが悪かったのかもしれない。
会うたびにするキスにもすっかり慣れて、最初はどうして息をしたらいいのかもわからなかった深い口づけも、繰り返されるごとにどうしたらいいのかが分かってきて、今では自然に息も出来るようになった。
だけど、それが長く深くなるほどに、身体はもっと触れてほしくてもどかしくなる。
相手にだって、もっと触れてみたくなる。
だけど、それ以上をしたい。してほしい。だなんて恥ずかしくて自分からはなかなか言えずにいた。
じれてしまって、どうしようもなくて、リヴァイ君の昔からの知り合いである蝦夷森さんに、それとなく聞こうとして、あっさりとそのことを見破られてしまい……。
「そういう事なら、私のおすすめの本を貸してあげるよ！」
何かヒントになるかもしれないよ！と、善意で貸してもらった本は、いわゆる同人誌で……。
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作者名：Kokubyaku | 作成日時：2024年3月13日 16時
