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だけど、本人がいなくてよかった。
こんな時に顔を合わせるとか、
一人でも恥ずかしいのに、きっと顔を見るたびに夢でのことが思い出されて、かなり気まずいに決まてる。
はあ。
とため息をついてから、少し落ち着こうと、ゆっくりと上半身を起こした。
スマホを探してテーブルの上に置いたことを思いだし、
そばにあるローテーブルに手を伸ばしかけた瞬間、
──パラリ。
と、室内に乾いた紙を繰る音が響く。
静かだからこそ、その微細な音を耳が拾ってしまったのだ。
それだけで、まさかの事態が予測され心臓が大きく跳ねて縮み上がった。
いるはずがないと思い込んで、完全に油断していた。
背中を変な汗が伝う。
音のした方を向きたくない……。
だけど、見ないわけにはいかず、
現実逃避をしたい衝動にかられながら、ゆっくりと音のした方へと顔を向けた。
「りヴぁ、リヴァイ君！？」
右隣にある一人掛けのソファーは、ちょうど起き上がった状態からすれば、背後側にあった。
言い訳をするなら、それも気づくのが遅れた要因の一つ。
だけど、それ以上に本人の気配がなさ過ぎなのだ。
腰掛けているその人の姿を捉えて思わず彼の名前を呼んだ私に、
リヴァイ君もまた手元の本へと落としていた視線を私へと向けた。
「なんだ」
いつものように抑揚のない声が返ってくる。
「い、居たの！？なんで！？一体いつから！？」
仕事のはずなのに……とか、
焦ってしまって、頭で考えていた事が口からもれた。
「今日は現場の監察だ。早めに終わると言っておいたはずだが……。あと、お前がそこで寝言を言ってた時から居た」
本をテーブルに置き、
代わりにティーカップを手に持ちながら彼は答えた。
「そうなの？……って、え！？」
寝言！？
なんか言ってた私！？
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作者名：Kokubyaku | 作成日時：2024年3月13日 16時
