60c Blumenstrauß～空の花束～【リヴァイ夢】 (ページ30)

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　今回の事で、余計な心配は必要ないということがわかった。
　

　──見逃してやるのは今回きりだ。

　そう心に決めて、Aの額に口づけると、荒い呼吸を繰り返している恋人を抱きしめた。

　自分の胸の内側に収まる彼女は、疲れきってしまっていて、眠たいのか今にも瞼を落としそうだった。

「……リヴァイ君。わたし、……触ってもほしいけど、同じくらい…リヴァイくんにもさわり、たい……」

　途切れ途切れではあったが、耳に届いた言葉に面食らう。

「……」

　こっちの気も知らずにそのまま眠ってしまったAに対して、

　……まったくコイツは。

　と、息が漏れる。

　しかし、心が満たされたような感覚に幸福を感じる。

　──愛している。

　そう言ってしまうにはまだ早い。

　リヴァイにとってはあまりにも重い言葉だった。

　故に簡単にその言葉を紡ぐことなど出来ない。

　その代わりにごく単純な言葉を彼女に伝える。

　瞼を閉じてしまったAが、その言葉を聞いていたかは定かではないが。

　ベッドサイドのチェストの上の時計を見る。

　彼女の大学の寮の点呼時間まであと僅か。

　リヴァイは一度起き上がるとハンジにAの外泊届を出してもらうようメールを送った。

　そのまま寝室を出て、頭を冷やすつもりで浴室に入りシャワーを浴びる。

　室内に戻れば、ハンジから、《了解。》という返信がきていて、続いて返って来た"おめでとう"という露骨なスタンプにリヴァイは眉を寄せて舌を打つ。

　メールをそのままに、スマートフォンをサイドチェストの上に置くと、幸せそうに眠りにつくAの隣に横たわり、彼女の身体に腕を伸ばす。
　

　そうしてリヴァイもまた、彼女のその温かな体温を感じながら瞳を閉じた。