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Aにはお金がない。
病院では与えられた病衣を着ていれば良いが、取り急ぎ用意してもらったもの以外の下着すらない。
元々着ていた制服は、ほつれに破れ、掠れて切れて、あらゆるもので汚れ過ぎていたために到底着られるものではない。雑巾のほうが余程綺麗だ。
靴も同様に、磨り減って穴があいてボロボロだった。
つまり着るものがない。年頃だとか性別だとか以前に文化人として由々しき事態である。
しかし前述した通りAに持ち合わせなどないので、保護費として出された一部を使って必需品などの買い物に行くことになったのは必然的だった。
正式な保護が決まったこともあって、同伴のもと半ば軟禁状態だったA自らの外出が認められたのだ。
ところがその同伴が問題だ。
同伴者は香山睡。いつものコスチュームではない普段着で現れたミッドナイトがそう呼べと言った、彼女の本名だ。
恐らく世間一般の女性たちは普通にこういったテンションでの買い物をしていると思う(ような覚えがある気がする)のだが、現在のAにはただただ疲れるだけだった。
「香山さん、わたしが着飾る必要もないですし、シャツとジーパンがあれば充分ですと何度も」
「こっちも何度も言うけど、これは着飾る内に入らないわ！ むしろ身嗜みよ。それに折角元が良いんだから可愛くしないなんて勿体ないわ！」
今日出掛けるために彼女の古着を貸してもらった身としてはあまり言えないがダメ元で三度目の意見をすれば、彼女もそれに慣れたのだろう、食いぎみに言いくるめて持論を展開する。
身嗜みだと言われてしまえばAはもう黙りこむしかない。
ただ、自分が可愛いだなどというのは理解できないし、浪費する方が勿体ないと思う。
あれやこれやとAに服を充てては、ああでもないこうでもないと楽しそうにしている彼女を、Aはどこか遠いところでぼうっと見ていた。
「さて、あまりここだけに時間も使えないし、今日のところは勘弁してやるわ。お会計して次に行くわよ」
「はい」
声を弾ませてレジへ向かう彼女を追いかける。
現実的な話、こんなことをしても彼女に利点などないだろうに。
(いいひと、なんだろうなぁ……)
Aが本気で嫌がる物は買わないし、半ば押し付けられた
ちゃんとAの言葉を聞いてくれている。
胸のあたりがぽかぽかすることに首をかしげながら買い物を続けた。
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詞葉(プロフ) - 蓮さん» コメントありがとうございます。とても嬉しいです！ 何分遅筆なものでお待たせすると思いますが、是非よろしくお願いします。 (2020年3月12日 12時) (
レス) id: dc1dd40e5c (このIDを非表示/違反報告)
蓮(プロフ) - とても面白いです…！更新楽しみにしてます！ (2020年3月11日 1時) (レス) id: 0d837f5408 (このIDを非表示/違反報告)
詞葉(プロフ) - 桜猫さん» コメントありがとうございます。ちょっと迷走しつつあるので気長にお待ちいただければと思います。いただいたコメントでモチベ上げて頑張りますね！ (2019年9月2日 23時) (レス) id: df44a89d14 (このIDを非表示/違反報告)
桜猫(プロフ) - 夢主ちゃんの今後が気になりますな… (2019年9月2日 17時) (レス) id: b3a762d464 (このIDを非表示/違反報告)
詞葉(プロフ) - ルーさん» コメントありがとうございます。とても嬉しいです！ 仕事の合間にぽちぽちするのでゆっくりになりますが、ハピエン厨なのでそうしたいと思っています。 (2018年2月8日 17時) (レス) id: 703ce966a6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：詞葉 | 作成日時：2017年10月7日 13時
