白い絵の具を落とす (ページ8)

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▽. ９ you ページ8

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隣に並んで寺の階段に座り、
2人でお互いの話をした。

彼は「高杉晋助」といい、
この近くに住んでいるらしかった。

おにぎりを食べながらそう話す彼の顔は
今日は傷がない。

夕方になるといつもこの寺に1人でやって来て
ボロボロの姿で日が暮れるまでそこにいる。

私の彼への認識はそんなものだったけど、
どこか寂しそうな彼が気になって
毎日この寺に見に来ていた。

そうしていたら、ある日まさかの
追いかけてきたのだ。

捕まって怒られてしまう、と
泣きそうになっていたら、

彼は私が落としたおにぎりを
「悪かった」と自分の手ぬぐいで
包み直してくれた。

初めは、怖い人なのかもしれないと
思っていたけれど
とても優しい男の子だった。

太陽が山の向こうに沈みかけ、
暗くなってきたため
ずっと話していた私たちは腰を上げる。

「……お前、明日も来んのか？」

帰る間際、彼はそんなことを言って。

…来てもいいのだろうか。

返答に悩んでいたら、
優しい声が降ってきた。

「明日も来いよ、……A。
待ってるからよ」

いつも無表情な彼の綺麗な笑顔は、
私の目を惹き付けるには充分だった。

自分の隣にいてもいいと、彼が、

晋助がそう言ってくれたような気がした。

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