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体を跳ねさせた彼女の手から、
笹の葉の包みがすべり落ちた。
すぐに反応して、間一髪で手を伸ばし
拾い上げる。
「危ね、……
1度だけじゃなく2度も食いもんを
落とすヤツがあるか」
「……え、……」
戸惑った様子の彼女に、笹の葉の包みを
掲げてみせる。
「握り飯だろ?
お前今まで、ここに来る度にこれ
持って来てたんだろ」
ぽんと彼女にそれを渡すと、
寺門をくぐり石畳を歩いて行く。
「悪いが俺ァ知らねェやつから
物はもらわねェよ」
……と、言ったそばから間が悪かった。
ぐー、と俺の腹の虫が鳴る音が寺に響く。
顔に熱が集まっていくのを感じながら、
振り向いてにらみつけ
違う、と否定しようとした。
「………ふふ、」
それは、初めてまともに聞く、
彼女の声だった。
そして初めて、そいつの笑顔を見た。
ああ、こんなに綺麗だったのかと
一瞬目を奪われた。
花が咲くみたいだって、思ったんだ。
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作者名:あやの | 作成日時:2018年5月20日 20時