迷子の迷子の

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12月に入って少しずつ、Aの様子がおかしくなった。





あ｢渉くん…もうちょっといてもいい？｣

渉｢珍しいこと言うんだな。いつも0時過ぎたらすぐ帰るのに｣

あ｢じゃあ帰るからいい｣

渉｢帰んな帰んな｣





立ち上がって帰ろうとするAを慌てて引き止める。





渉｢帰れなんて言ってないだろ？むしろ嬉しかったっつーの｣

あ｢渉くんはいちいち意地悪すぎるんだよ｣

渉｢なんかおまえ見てるといじめたくなるんだもん｣

あ｢そんなのやだ｣

渉｢じゃあどんなのならいいの？｣

あ｢それは別に…｣

渉｢だったら俺にいじめられてなさい｣

あ｢…帰る｣

渉｢冗談だっての。ほら、こっち座れよ｣





拗ねるAの腕を引いてソファーに座らせる。


夜に会える日はいつもそんな感じ。









2〜3日会えない日が続いたある日、Aから電話が入った。





あ『もしもし渉くん？』

渉｢どした？｣

あ『今日遅い？』

渉｢うーん…なんとも言えねぇなぁ｣

あ『そっか…なら大丈夫』

渉｢なんかあった？｣

あ『ううん、ちょっとお腹が痛いだけだから大丈夫』

渉｢なるべく早く帰るよ｣

あ『大丈夫だから。仕事中にごめんなさい』






電話を切ると、太輔が心配そうに俺を見ていた。




太｢Aちゃん？｣

渉｢なんか腹痛いって｣

太｢珍しいね、Aちゃんが渉の仕事中に連絡してくるなんて｣

渉｢12月入ってから様子変なんだよ｣

太｢聞いてみた？｣

渉｢いや…俺には話さなそうな雰囲気｣

太｢そっか｣





結局仕事が終わったのは1時回ってて、家に着いたのはさらに1時間後だった。





〈起きてる？〉




とりあえず連絡を入れてみる。




《起きてるよ
今帰ってきたの？お疲れ様です》

〈腹は？〉

《痛いけど、精神的なものだから大丈夫
心配かけてごめんなさい》

〈今から来る？それかそっち行く？〉

《明日は？》

〈オフだよ〉

《来て》






Aがそんな風に言うなんて、よっぽど腹が痛いのだろうか？

精神的なものって何？





急いで部屋着に着替えて隣の家のチャイムを鳴らすと、待ってましたと言わんばかりに勢いよくドアが開けられ、Aが抱き着いて来た。





渉｢んあっ！？｣

あ｢渉くん…｣

渉｢ちょ、どうしたよ？とりあえず中入れて｣




抱き着くAを軽く持ち上げて、家の中に入る。

Aはぎゅーっと抱き着いて離れようとしない。




あ｢渉くん、今日はずっとうちにいて｣




何だって？

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