孤爪姉のトリセツ【黒尾鉄郎】 (ページ40)

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トリセツ三十六ページ40

夢主side

監督「何か気になることでも？」

監督が試合をみながら話しかけてきた。

「…ん、まぁ」

監督「お前ならどうする？」

「え？」

監督「烏野だよ。不満があるんだろう？」

ニコニコする監督。
お見通しなんだ…さすが。

「…私が烏野のセッターなら、もっとチーム全体を強くできる」

監督「ほぉ…烏野の9番に不満か？」

「バレーって本来、打つ人が王様なのに、烏野はセッターが王様って感じ。「俺のトス黙って打っとけ」みたいな。

…気に入らない。影山飛雄。

私や研磨ならもっとアタッカーの良さを発揮できるのに…」

確かに翔陽は凄い。影山飛雄も凄い。

でも、あの速攻じゃ絶対全国で勝てない。現にもう音駒は何本も止めてるし。

それでも烏野は進化しようとしない。
護りに入ってちゃ進化しないのに…

監督「じゃあアドバイスの一つや二つしてやったらどうだ？何なら、Aがコーチしてやりなさい」

笑いながら冗談交じりに提案してきた。
また監督は変なこと言って…

「何言ってるの、私は、」

監督「俺は『ゴミ捨て場の決戦』がしたい」

「！」

監督「春高予選で烏野が落ちるなんてことがあればできないだろう？俺だっていつまで現役でいられるか分からねぇし…

まぁそんな願望は置いといて…

ちっとは骨のあるチームにするくらい、お前になら可能だろう」

「ん、できる」

こくりと頷くと、監督は頭を撫でてきた。

監督「お前は本当に優秀な奴だ。お前にならこの席を受け渡しもいいかもな」

「何言ってるのよ。私が監督になったら監督の席が無くなるじゃない」

監督「はっはっは！そうだな、すまんな」

「もう……

！？えっ」

思わず立ち上がって、声をあげた。

目線を試合に切り替えると、3番に上がってるはずのトスを翔陽が打とうとしてた。

危ないっ…！

そう思った直後ドスッと鈍い音がして、3番と翔陽がぶつかった。

そして体の小さな翔陽は床に落ちていった。

幸い怪我などはなく、色んな人に怒られて心配されてる。

「…っ」

監督「ほほぉ、まるで、エースへのトスを奪おうとしたようだったな」

ふるりと震えた。武者震いだ。

何。凄い。凄いよ。翔陽は凄い。

自分はエースであると、自分こそが頂点であると言う、その貪欲さ。

日向「なぁ影山

「ぎゅん！」の方の速攻、

俺、目ぇ瞑んのやめる」

「ははっ……」

そんなの成功しちゃったら、

最高じゃない。