紫原くん、期待させるのはやめてください。

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「 ！紫原くーん！ 」

「 げ、Aちん 」



げってなによーと私を見て少しだけ怯んだ彼に冗談交じりで話しかけた。

普通の会話なら体当たり出来るのに、恋愛感情出すと何も出来なくなるんだもんなぁ…
…無念。



「 …俺も一緒に部活行きたい 」

「 …え？ 」


私が言い出そうとしていたことが先に彼の口から出てくるのは、多分これが初めて。

ていうか「俺も」って言うあたり、私が常に一緒に部活に行きたいのってお見通し…？



それなら、と話を続けようとした矢先、
紫原くんの顔が物凄く不機嫌なことに気がつく。


「 おっさんの所行ってレポート出さなきゃ行けないから、先行ってて 」


おっさん、というのは多分私達の担任の事だろう。
相変わらずあだ名のセンスが変わってらっしゃる。


「 …そっか 」

「 え、そんな落ち込む？
…わ、めっちゃ顔伸びる 」

「 わぷっ 」


わかりやすく項垂れた私に驚いたのか、顔を見ようと私の顔を上に向かせ、何故か頬を伸ばしたり押し潰したりしている。




「 む、むらさきわらふん、ふぁなし… 」


「 …はは。何言ってるかわかんねーし 」





「離して」口ではそう言ったけど、本当は嘘。

…ずっと私の大好きなこの大きな手で、私の頬を優しく撫でて欲しい。
聞こえていないなら、このまま



「 …じゃあそろそろ行くね。また後でね 」



…また新しく恋心が生まれてしまった。
期待しちゃった。

…また期待して、ズキズキと傷んでいる心なんか、今は気にしてられない。

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