墨になる前の昔話【1】 ページ20
小さい頃、アイドルになりたかった。
可愛い服を着て可愛い声で歌って踊れるアイドルに。
母は私にたくさん習い事をさせていた。バレエにスイミング、ダンス教室に塾……。最初は嫌々続けていた。バレエとダンス教室以外は途中で飽きてやめた。
小6の時、声優の存在を知った。自分の声を活かせる仕事に就きたかった私は声優を目指してみることに。中学に入ってから地元のアイドルスクールに入った。初めは歳上の先輩達がいてセンターではなくて端っこでバックダンサーをさせられた。ダンスが苦手だった私は歌うことが出来なくてすごく嫌だった。
先輩のママ達に笑顔で踊りなさいと何度も言い聞かせられた。バックダンサーなんだからそんなの嫌に決まっている。無理やりでも笑顔を作って踊っていた。唯一私が好きに歌える時、それはスクール限定のライブだった。その時だけはカバー曲として好きな歌を人前で歌うことが出来た。それだけを楽しみにレッスンに励んだ。スクールのオリジナル曲ではバックダンサーだけど、1人で歌うソロ曲は自分だけが見てもらえる楽しくて最高のライブだった。
先輩のことは苦手だった、でも少しでも仲良くなりたくていっぱい話しかけた。裏では変な子と思われたかもしれないけど、とにかく気に入られてセンターに立てるように頑張った。
高校を卒業してすぐに声優の養成所に入った。最初は楽しかったけど、だんだん周りの環境が怖くなって半年経ってから通うのをやめた。バイトも全然続かなくて、仕送りだけでやりくりしていた。最初は食材やら生活用品やらにつかっていたけど、だんだんグッズに手を出していた。それが原因なのか、急に死にたいという気持ちが日に日に大きくなった。両親に相談したら1回帰って来いと言われて地元に帰省した。帰省してすぐに病院に行った。うつ病と診断された。もう何もかもが見えなくなった。大好きだった声優にはなれなくて、アニメを見ても自分を苦しめるだけ。そんな生活が5、6年続いた。薬を服用して慣れてきたから、働く場所を探した。最初は就労支援施設、その次は就労支援移行施設B型、A型。全部1週間も続かなかった。
A)そんな時、私は君たちすとぷりと出会ったんだ。
莉犬)俺たちに……?
A)最初は妖怪ウォッチにしか興味がなかったんだけど、OP曲を聴いたら気になり始めて……。ななもりさんを好きになっていた。
莉犬)なーくんを……。
43人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:いちごみるく。 | 作成日時:2023年8月12日 16時