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私は意を決して玄関のドアを開けた。

そして、白い車へ近づく。

窓をコツン、とノックする。

窓越しに見えるのは、帽子を目深にかぶった降谷だった。

降谷はジェスチャーで助手席に乗るように私に指示する。

私は大人しく助手席に乗った。

「…久しぶりね。」

「…本当に、片瀬なのか?」

私はフッと笑った。

「貴方こそ、本当に降谷なの?」

私の返答に降谷は安心したような笑みを漏らす。

「その少し突っぱねた感じ、変わってないな。」

「降谷こそ。初めて会ったときから老化してなくて恐ろしいわ。」

私達の間には一気に昔の空気が戻ってきた。

「店に来たときには心臓止まるかと思ったよ。まさか、あんなところで再会するとはな。

察してくれて本当に助かった。」

降谷が頭を下げる。

「別に。だって、降谷は優秀だったから、行くとこまで行ってるんだろうな、って思っただけよ。」

私は肩をすくめる。

「その様子からして…。公安の潜入捜査官、ってところかしらね?」

私の疑問に降谷は笑みを浮かべるだけだった。

「さぁ。どう思う?」

「私、これでも洞察力はあるほうだって自負してるんだけど。安室透さん…否、ゼロさん??」

この言葉に、降谷は少し固まったあと、無言の肯定を示したのだった。



降谷は自分のことを話せない。そうすると、話題は自然と私のことになる。

「アメリカに行ったことは知っていた。でも、まさか戻っているとはな。」

「アメリカでの暮らしも中々気に入ってたわ。まぁ、諸事情ってやつ?」

降谷が突然真面目な声を出した。

「お前…。あの沖矢ってやつと交際しているのか?」

私は少し身構えた。

遂に、降谷が核心をつく質問を投げかけてきたからだ。

「ええ。何か問題でも?」

「あいつとは何処で出会った?」

降谷は矢継ぎ早に続ける。

「普通に日本でよ。だって彼は大学院生よ?」

私はあくまでしらを切る。

「本当か??本当なのか??」

あからさまに顔をしかめて私は言う。

「あのねぇ、もう付き合ってかれこれ半年になろうとしてるの。色々あって露頭に迷っていた私を助けてくれたのが昴だったんだから。」

降谷は私の目を真っ直ぐに見据えた。

そして。

「もう…松田のことは想っていないのか。」

私は深い溜め息をついた。

「ごめん。俺が踏み込める領域じゃ無いよな…。」

降谷の謝罪に私は首を横に振った。

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やっち(プロフ) - 終わりですか? (2022年6月25日 18時) (レス) @page43 id: aabe067d77 (このIDを非表示/違反報告)
暁月真愛(プロフ) - ayaさん» ハマっただなんて…!嬉しすぎるお言葉です!!これからいよいよクライマックスに迫ってくるので、是非楽しんでくださると嬉しいです(*^^*) (2021年6月14日 7時) (レス) id: e1d6d9168c (このIDを非表示/違反報告)
aya(プロフ) - はじめまして!とても面白いくてめちゃくちゃハマりました!松田さんはどんな気持ちで天国から見てるのか気になります、、(;_;) (2021年6月13日 21時) (レス) id: 4bc46bbce4 (このIDを非表示/違反報告)
暁月真愛(プロフ) - 紗那さん» まさかあんな3秒クオリティの前文で興味を持ってくださるとは…!嬉しい限りです!!テスト頑張ります…泣 (2021年5月23日 22時) (レス) id: ffc33c4c65 (このIDを非表示/違反報告)
暁月真愛(プロフ) - ふくろうさん» 先日もコメントをくださってありがとうございました!おあずけしちゃいましたね…笑 是非楽しみにしていてくださると嬉しいです! (2021年5月23日 22時) (レス) id: ffc33c4c65 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:暁月真愛 | 作成日時:2021年5月16日 17時

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