あなたの望みは、何? ページ38
「Aちゃん、血液検査の結果が出ましたよ」
白衣を着た女の人が、笑顔で私に話しかけてくれた。
アランはまだ来てないから、先に私が結果を聞こう。
「あの、私、どこか悪かったですか……?」
不安でいっぱいだった私に、彼女は笑顔を絶やさないで答えた。
「ううん。健康体よ。ほぼ基準値だから大丈夫」
それはそれで怖いような……。
でも健康でよかった。
「『ヘマトクリット値』っていう、血液中の赤血球の割合の項目がちょっと高めだけど、気にするほどじゃないわ。日内変動もあるし、女の子だし」
日内変動はなんとなく分かるけど、私が女の子だからって理由はいまいち分からない。
『男性と女性で基準が違うんだろうなぁ』とは察せるけど。
「これ、詳しい結果ね。一番右に書いてあるのが基準値で、その左がAちゃんの値」
そう言われて渡されたのは、レシートみたいな細長い紙。
見るのがおっくうになるくらい、びっしり漢字と数字で埋め尽くされている。
「あの子にも見せてあげてね。あの子、結果をすごく気にしてたから……」
きっと『あの子』とは、アランのことだ。
――アラン、あなたは何を考えているの?
あなたの望みは、何?
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
【アラン視点】
俺は、代表に恩がある。
恩を仇で返すわけにはいかない。
でも、Aを傷つけてしまう可能性もある……。
とにかくAのもとに行こう。
「……A」
代表から渡された薬品を持っている左手を後ろに回して、Aの視界に入らないようにしながら、Aに近づく。
「アラン……」
Aの不安そうな表情から察するに、俺はずいぶん険しい表情をしているのだろう。
もはや隠す気にもなれない。
「……血液検査の結果、出たらしいですよ。特に異常はないみたいです」
呼びかけたのに口を開かない俺に気づいて、先に口を開いたA。
Aから結果の報告表を受け取り、一通り目を通す。
Aの言葉通り、オールグリーン。やはり特殊なのは脳波のみなのか。
「あの、アラン! その……、大丈夫ですか? 顔色が良くないですよ?」
「……そう、かな」
ぎこちない作り笑いでさえ、Aには届かない。
「…………」
「…………」
無音が続く。
少しして聞こえてきたのは、遠ざかっていく研究員の足音。
今日のAの検査はこれで終了。だから研究員は解散していく。
再び静寂が訪れた時、ここには俺とAの二人しかいなかった。
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エビピラフ - すごくすっごく面白いです!!それに、キュンキュンしますね〜。これからも更新頑張って下さい!!! (2016年8月8日 1時) (レス) id: 44e702c603 (このIDを非表示/違反報告)
リオン(プロフ) - カレーオムライス…とてもおいしそ〜とても食べたくなってきました! (2016年8月6日 11時) (レス) id: 6bba43ef19 (このIDを非表示/違反報告)
瑠美 - 良かった。アランは、主人公に薬を飲ませなかった。安心しました。((o(^∇^)o)) (2016年8月4日 5時) (レス) id: eec2ec89e1 (このIDを非表示/違反報告)
瑠美 - 駄目。飲んじゃ駄目。その薬を飲んでしまたら、主人公は、壊れてしまう。アラン止めて。 (2016年8月2日 20時) (レス) id: eec2ec89e1 (このIDを非表示/違反報告)
頂志桜(サム)(プロフ) - 黒乙女ありすさん» コメントありがとうございます! 主人公の考えとしては、『本当に美味しいカレーなら、飽きなんてこない』ってことなので、3日連続でも彼女にとってはむしろご褒美です(笑) (2016年8月1日 19時) (レス) id: f46217bc92 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:頂志桜 | 作成日時:2016年7月20日 7時