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そこそこ広い1DKのここで、水回りだけは自分は少し気に入っていない

ここは洗面台と浴槽とトイレが一緒になったユニットバスで、それなりに使用頻度の多いここは本来他人への気遣いが必要なんだけど


「康二、開けるよー」

「え、ちょっと!!急に開けんといてや!!」


丁度シャワーを浴びていた康二を無視して私は洗面台で歯を磨く

浴槽の方では康二が何やら慌しそうにしているけど、カーテンがあるからこっちからはそのシルエットしか見えない

シャワーのお湯のせいで曇ったガラスを手で拭くと、気怠そうな顔をした自分と目が合った


「Aちゃん、えっちー」

「うるさい」


カーテンの隙間から顔だけ出して、私に不服そうな顔をする康二

その髪からは雫が垂れていて、ただでさえ伸びた彼の前髪が、重たくその目を覆っている


「髪、伸びたね」

「ええねん、別に」

「…お金貸そうか?」

「えっ、ほんま?」

「うん、行ってきなよ、美容室」

「着いてきてくれるん?」

「何でよ」

「えー、俺ここら知らんねん」


まだブーブー言ってる康二を置いて、私は再び歯を磨く手を進めるけど、視界の隅に、トイレの蓋の上に置かれた見慣れた芋ジャージが入ってきて

そういえば、康二はずっと同じ服を着てるなーと

ここに来る時に持ってきた服は、いくらお洒落さんな彼と言っても数着しかない

それに、冬にやってきた彼は恐らく春服なんて持っていないだろう

ましてや、一応とはいえ大学生なんだからお金も工面しなきゃいけないだろうし



「ねー、康二」


カーテンの向こう側でまたシャワーを浴び始めた彼に声を掛けると、のんびりとした返事が返ってくる


「今度、一緒に服買いに行こうか」

「ほんまっ!?」


康二が急にカーテンを開けるものだから、康二かカーテンか、どこから飛んできたか分からない水滴が私の顔を濡らす


「あ、ごめん」

「いい、大丈夫」


濡れた手で私の顔に触れようとする康二を止め、服の裾で顔を拭う

その隙間からニヤニヤしてる康二が見えた


「じゃあ、デートやな!」

「どっちかといえば子守だよね」

「何とでも言うたらええよー」


カーテンの向こうからは軽快な鼻歌が聞こえる

私も鏡の方を向くと、鏡の中のニヤニヤしている自分と目が合ったから、その自分に水滴を飛ばしておいた




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なむる。(プロフ) - 愛しい愛しい康二の可愛さ、伝わって本当に安心してます笑 自分も書いててこのシーンは筆が乗りました← ありがとうございます! (2020年9月16日 7時) (レス) id: 74f22f9e0f (このIDを非表示/違反報告)
雪の王子様 - 居座ってやる!って意地張るくせにそこのワード間違っちゃってるとことかすごい康二らしい(笑)元カレの鳩尾にクリーンヒットはすっきりしました!←  今回も素敵なお話ありがとうございました。 (2020年9月16日 2時) (レス) id: a501c8742d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:なむる。 | 作成日時:2020年8月6日 21時

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