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その日は、この家で私が唯一自分で買ったソファに、二人でキュウキュウになって眠った
そして次の日、康二は島に帰ることになった
彼と別れた私に対して、ストライキする理由はなくなった
久しぶりにスッキリとしたソファ
康二の私物はバックパックに詰められ、少しだけ増えた物は紙袋に詰め込まれた
郵送で送るよって言っても、結局、康二は最後まで譲らなかった
「お世話になりました」
玄関の扉の前、康二は部屋に向かって深く頭を下げた
康二に習って私も部屋を見る
随分見慣れてしまったこの家から、私は出ていく
それが、私のけじめ
康二を乗せて飛行場まで車を走らせる
道中では昨日の修羅場の話
今ではもうケラケラ笑いながら話せている
飛行場に着いて、飛行機のチケットを買う
1枚だけ、康二の分
飛行機が出発する時間まで、私と康二はロビーで待つことにした
ベンチに腰を据えて、ようやく一息つく
隣の康二も、足元にバックパックと紙袋を置いて深くベンチに腰掛ける
偶然か、私が島を出ていった日と同じスニーカーを二人とも履いていた
少し汚れた、スニーカー
「本当に、帰らんとやな」
康二の静かな声が、騒がしいロビーの中、私の耳に心地よく流れる
「うん、私、もうちょっとここに居る。大概騒がしいけど、ここはもう私の居場所だから」
嫌な人も
嫌な場所も
嫌な言葉も
嫌なもの、沢山沢山あるけれど、
ここに息づく自分は、案外嫌いじゃないから
「俺、もう来んよこんな所」
康二はそう言って、軽やかに笑った
そんな康二の肩に、私はそっと頭をのせた
康二の首筋からは優しい香りがした
今更、康二の匂いを知った気がした
「康二、好きだよ」
「もう、俺に言わせてや」
康二が動き、私の頭が康二の肩から離れる
康二は少し体を曲げ、私の瞼に優しく口付けを落とした
「好きやで、A」
康二の優しい、静かな声が、私の体を満たしていく
すごく、懐かしい感覚だった
それはもう、一方的な感情の押し付けなんかじゃない
あの日以来、漸く繋がった線と線
ただ、今はこれ以上もこれ以下もない
私達は、遠い未来で結ばれるのかもしれない
でも、今は、どうかこのままで
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なむる。(プロフ) - 愛しい愛しい康二の可愛さ、伝わって本当に安心してます笑 自分も書いててこのシーンは筆が乗りました← ありがとうございます！ (2020年9月16日 7時) (
レス) id: 74f22f9e0f (このIDを非表示/違反報告)
雪の王子様 - 居座ってやる！って意地張るくせにそこのワード間違っちゃってるとことかすごい康二らしい(笑)元カレの鳩尾にクリーンヒットはすっきりしました！← 今回も素敵なお話ありがとうございました。 (2020年9月16日 2時) (レス) id: a501c8742d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：なむる。 | 作成日時：2020年8月6日 21時
