検索窓
今日:7 hit、昨日:0 hit、合計:12,548 hit

12. ページ12

.




あの元カレからの電話があった次の日

心配する康二を他所に、私はいつものように化粧していつものように出勤して

元カレの電話はあの一回だけで、それっきり掛かってくることはなかった

その事実は呆気なく、それでいて私を安心させていた


昼休憩が終わってから20分後

そろそろだろうか

もうほぼ日課となりつつある無言電話は、大体いつもこの時間に掛かってくる


もう何とも思わなくなった自分の心情や如何にって感じで、いつでも掛かってきて良いように受話器に手をかざしてスタンバイ



prrr...




一回目のコール音で受話器を取り、定型文を発する


あ、きた


受話器の向こうは無言の世界

私も下手に言葉を発することはせず、向こうとこっちとでお互いの出方を伺っているような空気

ここから始まるカウントダウン

無言電話は大体15秒くらいで切られる

自分のデスクの端に置かれた、安物の置き時計の秒針が時間を伝える


7、6、5、


自分の頭の中で刻まれるカウントが0に近づく刹那、いつもなら無で終わるその会話の中に唐突に音が流れてくる

それは何か、電子音か、生活音か、耳障りな音が一瞬だけ小さく聞こえた

電話は私のカウントが0になる前に慌てたように切られた

いつもとの違いに戸惑ったのは私だけじゃないだろう

どこか非人工的だった空間は、ちゃんと人の手によって作られたものだった

その事実が何だか唐突に怖くなった


これはきっと女の勘ってやつ

電話の向こうの人物は、少なからず女なのだろう

理由のない確信が私にはあった

本当に、理由なんてないけれど


漸く私も受話器を下ろす

その手は微かに震えていた

理由のない悪質さが、ちゃんと理由のある冷酷さに変わった瞬間

女に恨まれるようなこと、したっけ?

歴代の女遍歴を思い出しながら、自分にそんなに関わりの深い女がいるような気もせず


ただ、女が女に向ける感情の怖さはよく知っていたから、それは私をとても億劫にさせた






.

13.→←11.



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (54 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
26人がお気に入り
設定タグ:SnowMan , 向井康二 , 短編
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

なむる。(プロフ) - 愛しい愛しい康二の可愛さ、伝わって本当に安心してます笑 自分も書いててこのシーンは筆が乗りました← ありがとうございます! (2020年9月16日 7時) (レス) id: 74f22f9e0f (このIDを非表示/違反報告)
雪の王子様 - 居座ってやる!って意地張るくせにそこのワード間違っちゃってるとことかすごい康二らしい(笑)元カレの鳩尾にクリーンヒットはすっきりしました!←  今回も素敵なお話ありがとうございました。 (2020年9月16日 2時) (レス) id: a501c8742d (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:なむる。 | 作成日時:2020年8月6日 21時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。