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佐久間さんに利用されている
そんなこと、知っている
それは恐怖の対象だった
誰かに縛られることは
でも、それがもしも自分を必要としていたら？
こんなにも弱い姿を見てしまったら？
彼のこと、少しでも知りたいって欲を見せてしまったら？
もしも私の心が彼に向いているのなら、これは許されることなのだろうか
お互いに繋がり合わない心を持ちつつ、見た目では良しとされるのだろうか
彼と共有した罪はあまりにも重くて、甘くて
私が、彼を、秘密を守らないと、なんて
出来過ぎた話なのかな
佐久間さんの口唇が、私と同じ色に染まる姿はあまりにも美しくて
まあ、良いか
私だって、彼に執着しているから
それは愛ではないくせに、ひどく感情的なものだった
その晩から、佐久間さんと私が過ごす時間は増えた
反比例するように、涼太と晩御飯に出掛けることは少なくなった
佐久間さんはほぼ毎日のように私の家に転がり込んできては、寝食を共にする
身体的な繋がりは一切といってない
ただ、お互いの共有する時間が多いだけ
徐々に私の狭いワンルームが、佐久間さんのもので溢れるようになった
一人だけだと思っていた空間から、誰かが居ることがあまりにも当たり前になった空間へ
ベッドにもなる一人掛けのリクライニングソファの上で、佐久間さんはその殆どの時間を過ごした
佐久間さんが持ってきた漫画が足元に積まれ、彼の衣服を私の洗濯物と共に干す
二人分の食事を作る量も漸く分かってきた
キーケースに入れた私の鍵と、美少女キャラのキーホルダーが付いたスペアキーがローテーブルの上に転がっているのも見慣れた光景
そして、彼は私の時間も共有したがった
大学に行く日やバイトの日
それは徐々にひどくなり、やがて私が誰と何をするのかも知りたがるようになった
だからといって、彼の時間を共有することはなかった
私が家を空けている時にふらっと家に立ち寄り、ふらっと出て行った形跡があるときもあった
はたまた、連日この家に泊まり、朝出て行く時に見た光景と全く同じ光景が帰宅したときにあったり
猫みたいな人だと思う
共有する時間が長ければ長いほど、お互いの気持ちが近くなるなんて、嘘だと分かった
私と佐久間さんの所謂恋人ごっこは、傍から見たら正常なものなのに
この空間は、ひどく歪だ
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なむる。(プロフ) - のんさん» コメントありがとうございます！この作品自体を美しいと言っていただけること…これ以上に嬉しいことはないです！また新しい作品でも出会えること願ってます。ありがとうございます！ (2021年2月10日 6時) (
レス) id: 74f22f9e0f (このIDを非表示/違反報告)
のん(プロフ) - 凄いという言葉しか出てこない、語彙力の無い自分が恨めしいです。セリフや文章表現の仕方など、とにかく美しい作品をありがとうございました。 なむる。さんの作品が大好きなので、これからも応援しております。 (2021年2月10日 1時) (レス) id: bdef6e19e8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：なむる。 | 作成日時：2021年1月14日 22時
