24.影は濃くなる一方で ページ25
その日から、一週間は不吉なことが続いた。
階段で誰かに押されたのは気のせいではないらしく、二、三回ほど背中を押された。
敦がいないときに起きたが、さすがに前回のことがあったので、そのときは自分の反射神経でどうにか対処できた。
でも、出したはずのレポートが違うところに提出されていたり、落とした覚えのない手帳が学校に届けられたりしていた。
校内だけでこの有り様なので、家から学校まで赤司くん(正確には赤司くんの執事さんたち)が送迎をしてくれて心底安心している......。
「いやいやいや、安心しちゃダメだから」
赤司くんの淹れてレモンティーを左手に、顔の前で右手を振るひな。
その隣で足を組ながら座っている赤司くんも厳しい目で私を見ていた。
今日はバイトが休みだったので、運転手さんに頼んで一人でひなのお見舞いに来ていた。
そして、最近の不可解かつ不穏な小さな事件を話して、今に至る。
私は淹れてもらったレモンティーをふーふーと冷ましながら、一口飲む。
匂いからして上品なので、きっとお高いなのだろうなあと味わっていると、正面から視線を感じた。
「な、なに?」
「あのねえ、危機感なさすぎ」
はあ、と肩をすくめるひな。
いや、あなたに言われたくないです、という言葉は(なんか睨まれたので)口に出さず、誤魔化すようにティーカップに口をつける。
「これじゃあ、紫原も心配になるわけだな」
「だねえ」
「......え、ちょっと待って」
いきなり敦の名前が出て来て、たじろぐ。
なんで敦が心配を......?
そう考えて、友達だからかと納得すると「友達だからじゃないからねえ」と心を読んだひなが速攻で私の考えを否定した。
「え、友達だからじゃないの?」
「んー、まあ、それもあるけどそれ以上みたいな?」
「なにそれ......?」
ひならしくもない歯切れの悪い答えに訝しむ目で見つめれば、ひなは苦笑した。
「こればっかりは他人が口出すことじゃないから」
「ふーん。まあ、いいや」
「いいんかい......」
ぼそりとひなが何か言ったような気がしたが、気のせいだろう。
私はお高い紅茶をまた一口飲んだ。
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作者名:星蛍 | 作成日時:2018年9月5日 23時