14.忘れられない瞬間 ページ15
久しぶりに会うといっても幼馴染。
本題に入った瞬間、静かに怒り始めたのに嫌でも気づいた。
怒りたいのはこっちなのに……。
だが、己の胸中で渦巻く気味の悪い予感が俺を冷静にしていた。
いや、冷静ではなかった……。
ただ、さっきみたいな言い争いにはならないくらい困惑していたかもしれない……。
「……避けたのはそっちじゃん」
怒りを抑えるように、けれどどこか悲しげに呟くA。
目がった瞬間、ずっと昔にも見た瞳を思い出した……。
高校生活最後の冬。
周りはセンター試験を終えて、少し落ち着いていた者もいれば、より一層緊迫した者もいた。
俺はそんな周りを横目に、バスケ部顔を出したり、モデル業に励んだりと割とゆったりとしていた。
部活での功績によって、大学は推薦で決まっていたし、万が一落ちてもモデルをしているため気が楽だった。
そんな折、仕事があったため、昼休みに早退することになっていた俺は昇降口に向かっていた。
そのときだ。あいつを見つけたのは……。
見つけた瞬間、思わず足を止め、暫く信じられずに見入っていた。
図書館の窓際で、真剣な顔で何かをやっているA。
まあ、勉強しかないんすけど……。
けど、そんなことはどうでもよかった。
俺が驚いたのは、
茫然と彼女を見ていると、ふいに顔をあげた彼女が俺の方を見た。
だが、あいつは俺を見て一瞬は目を丸くしたがすぐに表情を戻す。
そして、何食わぬ顔で勉強を再開した。
それを見て、ああ、あいつは俺がいること知っていたのだと気づいた。
そして、
その瞬間、胸が締め付けられた。
思わず、しゃがみこんでしまうが、幸いにも周りには人がいなかった。
「……いてぇ」
なんだ、これ？
なんて思わなかった。
中学で、
もう一度見たとき、今度は息を飲んだ。
向こうからは俺の姿が見えない。
だからこそ、あんな表情を見れたのだろう……。
あんな、泣きそうな顔を……。
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作者名：星蛍 | 作成日時：2018年9月5日 23時
