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その頃、ナミはポムフィオーレ寮にいた
けれどそこはポムフィオーレ寮であってポムフィオーレ寮ではなかった
壁に黒い液体が流れていたり、ガラスや鏡が割れていたり、不気味だった
何より、ここには寮生が誰ひとりいないのだ
「ここは…？夢のなか…？」
ステージのところにいた記憶があるため
なんとなくこれが幻覚だということはわかった
「夢？何を言ってるの？ここは貴女の世界よ」
そこへ優雅に現れたのは
青いドレスに身を包んだヴィルさんだった
しかし肌は白く、顔には黒い網状のタトゥーが施されている。片目に紫の火がついているような…
頭には王冠のような髪飾りが…豪華な衣装…
「そして私は貴女のフィアンセ。こっちへいらっしゃい。私の毒林檎ちゃん」
ヴィルはポヘー、としているナミをクスリと笑い
手を差しのべた
ナミはそっとその手を握る
「あの…私…」
「帰るのはまだ後よ。お茶でもしましょう」
帰りたい、と言いそうになったナミをヴィルは止めた
そして広い部屋へと連れていく
そこはとっても真っ暗な部屋だった
真ん中に置いてある丸いテーブルの上で紫色の火を放つ蝋燭が淡い光をはなっている
「はい、紅茶よ」
「あ、ありがとうございます」
ナミを座らせたヴィルは平然と紅茶を用意した
それはぶどうの色だった
「あら、毒かもしれないのによく平気で飲めるわね」
「えっ！？毒！？」
「だってこの色よ？飲みたいとは思わないはずよ？」
「へ…？私は紫色、美味しそうだと思いますよ。ぶどうみたいだし…ほら、ブルーベリーだって美味しいじゃないですか」
「ふふっ、おかしな子ね」
クスクス、と口元に手をやってヴィルは笑う
ナミはそんなヴィルを不思議に思った
どうして優しそうなのにそんな怖い格好をしているのだろうか、と。おしゃれだけど、子どもは寄り付かなそうな格好…
ふと、フロイドの言葉が浮かんだ
＿＿＿オバブロ
「(あれって、なんのことだったんだろう…)」
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作者名：真灯
| 作成日時：2022年9月30日 18時
