夜空ノムコウ。

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｢ただいまー｣

いつもよりトーンをあげて言ってみる

今日は1年で1番家が静かになる日

瞬の命日

｢お母さーん、はい、ケーキ

お母さんこれ好きやんな！｣

｢え、あ、ありがと、廉 笑｣

泣いてたのかな

目が腫れてる

｢今日シチューか！いい匂いしてた〜！｣

シチュー

兄の大好物

兄っていっても双子やけど

｢廉、そんな気使わなくていいから笑

瞬みたい笑｣

｢え、お母さんひどない？笑｣

瞬はよく

お母さんにケーキを買って帰ってた

｢日々お世話になってるから！｣

って

気遣いのできる完璧な男

昔から

運動も勉強も

何もかも瞬には勝てなかった

同じ顔なのに。

だからなんとなく

瞬のことは苦手だった

俺のあだ名はずっと

永瀬瞬じゃないほう

慣れっこだった

「廉、ドラマ楽しみね！

瞬もびっくりだろーなー笑」

俺は

瞬が学年トップをとる度に、

瞬が部活で賞を取る度に、

イライラしてた

なのに

あいつは

「廉、ほんま応援してる！！

やばー！いつかデビューとかするんかな！！」

心から応援してくれてた

だから

嫉妬ばっかりしてた俺だったけど

結局は瞬のことが好きで

デビューした時は

1番にあいつに伝えたいと思った

「あ、お墓、ちょっと見てくる」

「今から？笑

明日でもいいのに」

「いや、今日行きたい」

彼は事故死だった

小さな子が道路に飛び出しちゃって

それを庇った、らしい

生まれてくる前から一緒にいて

これからもずっと一緒にいるんだと思ってた

喧嘩もするけど

2人でゲームして、馬鹿な話して

そんな当たり前の生活が

どれほど、大切で、懐かしくて

そして、、儚いか

永瀬家

と書かれた墓石の下で

彼は眠り続けてる

ここ数日の雨で墓石が汚れているはずなのに

ピカピカ輝いてて

お母さんが拭いたのかな

「お前がおらんと楽しくないねんけど、、」

そんな呟きは

広い墓地の中で静かに消えてく

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