幸せになりたかった人達の話 (ページ2)

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自分を殺した殺人鬼の話２ページ2

『父さん父さん!!』

バンっとドアを押し開け中に入る。
男の表情は警官を殺した時の冷たい表情とはうって変わり、少年のような笑顔を浮かべていた。
いや、歳相応と言ったところだろうか。
男はまだ成人もしていない少年だったのだ。

「なっ…お前…」

父さんと呼ばれた男はゾムーク家の現当主である。
ドアを開け入ってきた少年が自分の息子であるにも関わらず、幽霊でも見たかのような目で見る。

『父さん俺、今回もちゃんと出来たで!』

そう言って近づく少年を男は声で制止した。

「父さんと呼ぶなと言ったはずだが?」

そう言うと少年から目を逸らし、手元の書類に目を移した。

『あっ…ごめん……いや…すみません……ボス』

少年の表情は一気に暗くなった。

「報告はそれだけか?」
『……はい』
「なら早く部屋に戻れ。仕事はまだあるんだ。」
『………はい』

少年は父親の部屋を出た。
自分の部屋に戻ると、ベッドに倒れ込んだ。
天井を見上げる。

『……また……褒めてもらえんかったなぁ…』

ーー昔はもっと違った気がする。
父さんの笑顔を最後に見たのはいつだっただろうか。
昔のように、俺を褒めて欲しい。笑いかけてほしい。

『まだ頑張りが足りんのかな』

また、父に笑ってもらうために。
少年はそれだけで生きていた。
それだけが少年の全てだった。

夜、なかなか寝付けずに少年はベッドから身体を起こした。
何か無いかとキッチンの方へ向かった。
途中に通りすがった父親の部屋
微かだが、父親が誰かと話している声が聞こえた。

…何してるんやろ…

少年は無意識のうちに聞き耳を立ててしまっていた。

「あいつは…あいつの強さは人間じゃない…今回の任務で死んでくれると思っていたのに…」

誰の話だろう?

「でも、いいんですか?実の息子さんなんでしょう?」

実の息子?俺?

「構わん…味方の脅威になりかねん…。
俺も…いつか寝首を欠かれることになるかもしれん…そんなのごめんだ…!!」

俺が?脅威?なんで?

「…分かりました」

「あぁ、頼んだ…俺の息子を……あの化け物を殺してくれ」

"化け物"
その言葉を聞いた瞬間
少年の中で何かが壊れた音がした。

続く。