幸せになりたかった人達の話 (ページ1)

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自分を殺した殺人鬼の話１ページ1

夜道を走る一人の男の姿があった。
男はだいぶ焦っているようだ。
息を乱しながら必死に走る。
その男を追うように、悠々と空を翔る影があった。
逃げる男は行き止まりに追い詰められる。
家と家を渡り走っていた影が、スタッと華麗に地面へ着地した。
着地したのは緑の服にフードを被った男だった。
ニヤリと歯を見せ、逃げていた男に語りかける。

『あーあ。行き止まりっすねぇ』
「ヒッ…」

逃げていた男は恐怖て表情が固まった。
ずりずりと後退りするが、直ぐに背中が冷たい壁にぶつかる。

『今更逃げようなんて思わないでくださいよ。もう逃げ場なんてどこにも無いで?
それに、警官がそんな逃げ腰でいいとでも思ってるんすかねぇ?』

どうやら逃げていた男は警察官らしい。

「おっ…お前…なに者だ!!
あんなっ…あんな強さ…!一人であの人数の警官をっ…!!」

取り乱す警官の問に、やれやれ、という風に男は答えた。

『…ゾムーク、って聞いたことありません?』
「ゾムーク…って…あの暗殺一家の……お前…まさか…」
『そのまさかですよ。俺はゾムーク家の次期当主や』

フードで隠れていた男の瞳が怪しく光って見えた。
警官はその瞳に気圧され、腰を抜かして尻餅をつく。

『俺の父さ…いや、現当主が政府とゾムークの繋がりに勘づいているあんたの事が邪魔だと言ってましてねぇ』
「なっ…!?やはり政府は…」
『よく気づきましたよ。あんたの警官としての才能は本物や。
…けどまぁ…そのせいであんたはここで死んでもらう事になるんやけども』

男がそこまで言いかけると、いきなり警官が男に向かって発砲した。
しかし、男はそれを難なく交わしてしまった。

「なっ…!?」
『残念ですねぇ。俺はそんなんじゃ死なへんよ』

銃をかわされた衝撃に、警官はパニックに陥った。
男はナイフを握る。

「ばッ…化け物めぇぇぇぇ!!!!」

バンバンバン!!
鳴り響く銃声
しばらくの銃声が続いた後、カチっカチっと弾切れを示す音が鳴った。
暗闇に警官が目を凝らすと、男は居なくなっていた。

「どこ行きやがった!?」

警官が叫ぶと、

『後ろですよ』

警官が振り向く隙もなく、警官の首から血が吹き出た。
警官は地面に倒れ込むと数回小刻みに動いたが、そのままピクリとも動かなくなった。

警官の血によってできた血だまりを、男は冷たく見下ろしていた。

続く。