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「ど、どうしたの!?」
「Aさん……」
「わ、わ…!とりあえず中入りな?」
暗い表情で寄りかかろうとしてくる彼の全体重を受け止めることはさすがに出来ないので自分の足で歩いてもらう。彼はふらふらとした足取りながらソファではなくまっすぐベッドへと向かっていく。
…まあ確かにソファよりベッドの方が近いしね…。ボスンと倒れ込んだ彼のために暖かい飲み物でも、と準備している間も無言でそこにうつ伏せになっている。一体何があったというのか。
暖かい飲み物をサイドテーブルに乗せて私も彼の隣に腰掛ける。ノートンは膝立ちで上半身だけがベッドに乗っている状態だが、背が高くそれでも頭はベッドの向こう端に近いため顔はよく見えない。とりあえず見える背中だけでもぽんぽんとしてあやした。
「怖い夢でも見た?」
「いや……うん…まあ………」
「あ……ほんとにそうなんだ…」
誰かが言っていたのを小耳に挟んだだけだが、どうにもこんなほわほわしている彼にはとんでもない闇の記憶やらトラウマやらがあるらしく、関わる時には気をつけろというのを聞いたことがある。…それ関係だろうか。
そのまま背中に手を当てていると突然視界が上を向く。私のお腹には彼の腕、瞬間状況を察知して思わずため息をつきたくなった。
「……ノートン」
「…………やだ」
「まだ何も言ってないって…。あのね、貴方ここで寝るつもりでしょ」
そう言うと何も答えない彼。これは図星だ。さすがにシングルのベッドに二人、それも背丈が大きい彼と寝るなんて私がベッドから転げ落ちるのが目に見えている。寝不足で明日の試合に参加はしたくないし、ここを譲るわけにはいかない。
それにまあ、何となくダメだと思う。こう、不純異性 交遊的に。
「お願い……」
「お願いはこっちのセリフだよ…ほら、話も聞いてあげるし、飲み物もあげるから部屋に帰って寝な?」
「やだ」
「駄々っ子か…」
背中に彼の顔がぐりぐりと押される感覚がする。猫に甘えられているようで絆されてしまいそうになるが、ここはキッパリ言わないと。
「お願い…Aさん…」
「………っぐ……今日……だけ…ね…」
つくづくこの青年に弱いことに思い知らされて苦笑しか出てこない。
私も既に眠る用意はできていたので一度腕を離してもらい、彼が布団に潜り込んだ隣に私も寝転がった。
「…Aさんの匂いがする」
「ごめん、くさい?」
「くさくない。いい匂い」
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暁郗 - せんぱいナワーブ最ッッ高でした。もっとああいうの出して欲しいです、性癖にストライクしました。 (2021年5月3日 23時) (レス) id: 14cb33816d (このIDを非表示/違反報告)
ハル - 好きやぁ( ˘ω˘ ) (2020年4月8日 20時) (レス) id: 7d1a9cae04 (このIDを非表示/違反報告)
フルリ(プロフ) - ここさん» コメントありがとうございます!月相イライくんのお話ですかね、、!?ずーっと温め続けてきたお話ですので気に入って頂けたようで私も嬉しいです!応援もありがとうございます!なんとか乗り切りました!笑リクエストもぜひ!いつでもお待ちしております(´∀`) (2020年2月23日 4時) (レス) id: d10d29f4b8 (このIDを非表示/違反報告)
フルリ(プロフ) - かのはさん» コメントありがとうございます!!友人以上恋人未満のお話が大好きなのです、、笑 お楽しみいただけたようでよかったです!応援もありがとうございます!頑張りすのでこれからもよろしくお願いします! (2020年2月23日 4時) (レス) id: d10d29f4b8 (このIDを非表示/違反報告)
ここ(プロフ) - 最新話もめちゃめちゃ好きでした!!前から全部好きです…試験などなど頑張ってください(´;ω;`)くれぐれも無理のないよう…(´;ω;`)!リクエストしたいんですが、伝える語彙力がなく…!!!語彙力育ててから出直してきます…!! (2020年2月13日 4時) (レス) id: 9ad3d16544 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:フルリ | 作成日時:2019年10月14日 10時