【第五人格】陰で恋して(2)【中篇集】

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「ふ、ふっくく…！今更気づいたのか？」

「は、！？な、どういう…！？」

「いや、まさか信じねえだろって思ってたらほんとに信じてるし」

「え！？」



まさか、知っててやってたの…！？未だに首元でくすくす笑うナワーブさんに対して騙されたという思いと恥ずかしいという思いで涙が込み上げてくる。今まで信じてきたというのに、一体この仕打ちはなんなんだ。

じたばたとその腕から逃れようと暴れるが全く動かない。どうなってるんだ…！！



「ひ、酷いですよ…っ今まで、ずっと馬鹿だなあって思ってたんでしょ…！」

「ん？馬鹿で可愛いとは思ってたけど」

「は！？冗談…サイテー…！！なんなんですか、私のことが嫌いなんですか…！？」

「いや、最初っから俺のモノにしてぇなって思ってた」



その言葉にはた、と動きを止める。今、彼はなんて？

意味がわからないというように彼の顔を見ると、長い前髪の隙間から覗く瞳は緩く三日月を描いている。それに嫌な予感がしつつ再び暴れようとすると後頭部を急に引きせられた。あ、これはダメなやつだ。



「んぅ！」

「ん……」



ばしばしと彼の肩を叩くがそんな物で動じる彼ではない。何度も角度を変えて下から送られる口付けに意識がいっぱいいっぱいだ。息をしたくても鼻息がかかりそうとか変な音が鳴ったらどうしようとか考えしまって息を吸うことさえできない。…だいたい気にする問題はそこでは無いはずだが。

彼は唇を離す頃には私の顔は赤に染まり息を荒げていた。対照的にナワーブさんは全然余裕で私のことを見て愉しそうに笑っていたのだけれど。



「何？もうギブ？」

「はぁ、っ…どういう、つもりですか…」

「どういうって…。Aさ、キス、嫌じゃなかったろ？」



…そう言われてみれば確かに、自分の鼻息がどうとかは気になったが嫌悪感は抱かなかった。よしよしとするように頭を撫でながら言うナワーブさんは私の反応を見て嬉しそうに笑った。かわいい…じゃなくて。



「毎日して慣れてくれねえかな、って思ってさ」

「慣れ、」

「そ、慣れ。俺とキスすんのが当たり前」



ニッ、と言っていることとやっていることのギャップで目眩がする。つまり、ナワーブさんは毎日キスさせて慣れさせて嫌悪感なくして、嫌という選択肢を無くさせたってこと…？所謂外堀から埋められたと言うことだろうか。

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