無表情だけど感情あります【白鳥沢】 (ページ8)

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7話ページ8

紫の染みと匂いで、かけられたのはグレープジュースであることが推測できる。

「大丈夫ですか」

縮こまっている肩がﾋﾞｸｯと揺れた。

また、あの人たちにやられたのかな。
顔をあげたこの人は涙目で少し震えている。

なぜこの人がいじ/められているのか。

私はだいたい予想はついていた。

ふんわりしたボブヘアでこの可愛らしい顔。
ビクビクとした態度を取られれば、1部の女子は不快になるだろう、まあ、いわゆるぶりっ子。

私からしてみればどうでもいいことだけど。

「今度はジュースのシャワー？あの人たちはなかなかクレイジーなことをするんですね」

横にいる天童さんも酷いネ〜、なんて言っている。

人が通らないところにわざわざ呼び出して、お金を使ってまで嫌がらせがしたいのか？

ポケットからハンカチを取り出して、顔に付いている水滴を拭き取った。

全身にかかっているからあんまり意味ないだろうけど。

「あなたは、どうしてそんなに私を気にかけてくれるの…？」

その人は俯いたまま言葉を発した。

「気にかけているつもりは無い。別に助けようとも思ってないし。実際、何回か見て見ぬふりしてるから」

その人はそっと顔を上げて私を見た。

思っていたような回答じゃなくてびっくりしてるのかな…。

「私、嫌いなの。あなたみたいな自分の思っていることも言えないような弱い人…」

立ち上がってその人を見下ろして言った。

「でも、その弱さに漬け込んで嫌がらせをするような人はもっと嫌いだけど」

ポケットに入っていたポケットティッシュを袋ごとその人に投げた。

「あ、タメ口すみませんでした」

それだけ言って私は天童さんの腕を引いてその場を離れた。