【ONE PIECE】必要ない人間のはずだった【ゾロ】 (ページ4)

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4話ページ4

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「……ゾロくん、ここなんて書きたかったの？」

「"くいなにまた負けた。明日こそは勝つ"！」

「惜しい。これだと"明日"じゃなくて"昨日"」

「昨日こそは勝つってなんだよ！」

「だから聞いたんじゃん……」

文字は思いの外難しくて、今でも時々ミスをする。
だがあいつが読む新聞も少し理解出来てきたし、首を捻りながらも新聞を音読したら先生からも読めているとお墨付きを貰った。

Aは基本的な言葉や単語を教えた後、俺に一行でも良いから日記を書けと言った。自分の書きたいことなら書かされるよりも頭に入るだろうと。
その結果新聞が読めるようになったなら、あいつはやっぱり頭が良い。

「……ゾロくん、くいなに今日三百連敗したの？」

「は！？してねェよ！
今日は二回負けて、それで三百越えたって書いたんだ！」

「はい、修正」

苦笑いしながら俺に日記帳を返す。何処か呆れたような顔をしながらも道場の縁側に座っておれが必死で書き直しているのを眺めている。

俺はもうこの道場に通う大人にだって負けない。
まだまだ余裕はないけれど、それでも安定して勝ち星は挙げられるようになってきた。

それでもやっぱりくいなには勝てない。
そして、隣でぼんやり夕暮れを見送るAにも勝てない。

頭が良くなった自覚はある。
もう文字は読めるしお金や物の数え方もコイツから習った。剣の修行ばかりで他を疎かにしがちなおれを休憩と言いつつ縁側に引っ張って、そのまま流れで勉強を始めるのだから休憩が休憩にならない。

だけど、おれが正解したら嬉しそうだから、なんとなく頭が上がらない気分になる。だから勝てない。

この感覚は、自分でもよくわからない。

「なぁ、おまえ苦手なこととかあるのか？」

「運動」

「それ以外で」

「うーん……」

また困ったように笑う。
くいなのように勝ち気であればやりやすいが、こいつはそうじゃない。むしろ一歩引く性質をしているらしかった。

「……人と、関わることかな」

困ったように眉を下げながらも目を細めてどこか眩しそうにおれを見るものだから、思わず視線を外した。

「なんだ、それ」

「ダメ？」

「…………」

なら目の前に座るおれはなんなんだって叫んでやりたかったけど、眉を下げた笑みに何も言えなくて、ふてくされたまま押し黙った。