【ONE PIECE】必要ない人間のはずだった【ゾロ】 (ページ29)

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29話ページ29

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そうか。おれは、言ってほしくなかったのか。

くいなが"女だから"と言ったのに対して怒鳴ったのと同じように、"必要ない"と決めつけたこいつに怒りをぶつけたかったんだ。

けれどあまりにも寂しそうな顔をするからタイミングを失って、呼び止めても反応しないAにどうしたらいいのか分からなくなって。

世話になった奴が、おれにとって大事な友(、)が自分は必要ないのだと悟り、ずっと隣にいたはずのおれにさえ何も言わず別れの言葉を口にした。

_____怖かったんだ。
その別れの言葉が、本当に拒絶の意味を孕んでいるかもしれないと。これ以上聞きたくなくて、だから聞きもせず決めつけた。

先生の言う通りおれらしくない。
何が男だ、大剣豪だ。情けねェ。意地張ってないでさっさと家に突撃して、こうしてやれば良かっただけの話だ。

たった一人の女の言葉に怯えてしまうほど、おれは臆病だ。

「もう言うなよ」

「っぐす、何を……？」

「二度と"必要ない"とか、言うな」

Aの息を呑む気配。今でもそう思っていたのだとすぐに分かって抱きしめる腕の力を少し強める。
ぐっ、と苦しそうな息遣いが聞こえたが今は無視だ。

「おまえの中で何があるかは知らねェが、おまえは必要ない人間なんかじゃねェ」

故郷の島で見たんだ。先生に連れられて、おまえに感謝してる奴がたくさんいることをこの目で見た。
Aが自分自身を否定するのはそいつらのことも否定するも同然だ。それはあまりにも虚しい。

「必要ない人間が、この世界(、、、、)にいるわけねェだろ」

ぽたりとまた一つ、肩に雫が落ちた感触がした。
身体を離して顔を見れば呆然とした表情で、まだ少し涙がこぼれ落ちている。

「_______帰りたかったの」

「あ？」

「ここ(、、)ではない場所に、帰りたかった。
ゾロくんもくいなちゃんも叔父さんも故郷も、みんな好き。だからこそ、帰りたかった。

好きなのに必要とされないのはつらくて、苦しくて。
だから私は海へ出た」

でも、もし、もしそうじゃないなら。

私がみんなに必要とされているのなら_______。

Aの言うことはよく分からない。

おれたちの故郷はあの島で、それ以外には無い。
けれどおれたちが知らないこいつにとっての別の故郷があって、そこに帰りたいと願う理由が信念なら邪魔しねェ。

でも、それがただの逃避なら。

「帰すわけねェだろ」

他の誰でもない。
こいつを守るのは、おれでありたい。