【ONE PIECE】必要ない人間のはずだった【ゾロ】 (ページ28)

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28話ページ28

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何故涙が出たのか、自分でも分からなかった。

くいなちゃんのお葬式では泣こうにも泣けなくて、叔父さんに会わなかった期間も泣けなかった。

ここまでの旅も、震えるほど怖いことはたくさんあったし眠れない日もあった。それでも涙は出なかった。
泣くにはどこか現実感が無くて、自分の居場所は遠い気がして。

麦わらの一味となったゾロくんに出会って、より一層自分の居場所が遠くなったように感じた。
彼は『ゾロくん(友達)』ではなくて、『ゾロ(海賊)』だったから。あの日々を知っていてもルフィさん達と私は違う。仲間になれる強さも信頼も無い。

背中を預けてもらえる人間には、なれない。

アラバスタに巻き込まれたのは不本意だったし、物語の一部だろうと確信していた。それでも見捨てられなかったのは愛すべき国(居場所)を守ろうとするビビちゃんの心に動かされたのと、私は人を救える人間だと思いたかったからだ。

やっぱりほとんど何も出来ず、逃げて逃げて逃げて。

結局私は、何にも出来ない。
守ってもらってばかりで足手まといな邪魔者(異物)だった。そう実感するから人と関わるのが苦手だと分かっていたのに。

拒絶なんか、するわけない。
くいなちゃんと真っ向から向き合ってくれた君が私は大好きだもの。この世界にとって価値のない私に出来ることがあるなら、何事もひたむきな君の手助けがしたいと心の底から願ってる。

でも、自立して仲間もいるゾロに私なんかが必要だとは到底思えなくて、昔のように真っ直ぐ顔を見ることができなくなって。自分の存在価値が分からなくて。
彼に私は必要ないと断じた。

そのせいで、私が君を拒絶したと思われていたんだ。
_______ゾロくんを傷付けてしまったんだ。

……ああ、そっか。だから泣いてしまったのか。

痛いくらい私を抱きしめるゾロくんの背中に手を回す。
止まらない涙が服に付かないよう上を向くと、ゾロくんの手が私の頭を自身の肩に抑えつける。退こうにも力が強くて、じんわり伝わる体温にまた涙腺が緩くなる。

「ンな気使わなくていい」

「っ……！ごめ"ん"ね……っ！
私は、君を傷付けたいわけじゃなかった……！！」

「……おれも、決め付けて悪かった」

どこか居心地悪そうで、ホッとしたような。
不思議な声音のゾロくんの顔は見えないし回る腕の力はとても強い。けれどみっともなく声を上げて泣く私の髪を梳くように撫でる手はとても優しかった。