検索窓
今日:29 hit、昨日:21 hit、合計:585,071 hit

2話 ページ2




初めて入った道場には、変な奴がいた。

門下生ではないからおれたちと一緒に鍛錬したりしないし、なんなら剣のセンスも才能もない女。

一度従姉妹らしいくいな(、、、)に言われて素振りをしようとして、そのまま手からすっぽ抜けた竹刀がおれの脳天に刺さった時はブチギレた。


「本当に私の従姉妹?才能ないにも程があるわ」

「う"っ!!」

「こらこら」


呆れたくいなと、嗜める先生と、ショックで膝をつくA。その内道場の隅で『の』の字を書き始めたのを見て流石に悪いと思ったらしいくいなが謝っていた。


変なやつ。なんで道場にいるのかも分からない。
剣を持たない人間が来る場所ではないはずなのに、不思議とあいつは受け入れられていた。
先生の姪っ子だからというわけでも無さそうだ。


「なぁ、先生。なんでアイツここに来るんだ?」

「え?……あぁ、Aのことですか」


ふふ、と何処か楽しそうに笑う先生。
何だか馬鹿にされているように感じて顔を顰めた。


「そのうち分かる。近道をしたいなら、あの子をよく見ていることだ」

「?見ればいいのか?」

「そう。優秀な剣士たるもの観察眼は鋭くなくては。
その練習だと思って」


お遊びだと思った。
見ていれば理由が分かるというし、見ることが強くなることに繋がるならやってやるがそこまで本気にならなくていいだろう。



おれやくいなと歳が近いのか、くいなと身長が近くておれより身長が高い。絶対いつか追い越してやると決意した。

足音が小さい。剣はともかく。それ以外でも使える技術を先生から見て盗んだらしく、いつの間にか後ろにいることが多々あった。

視野が広い。怪我をして隠している生徒は基本先生がすぐに気付くが、先生がその場にいない時一番に気づくのはいつもAだ。先生がいる時は、でしゃばらないだけだと気付いた。

頭が良い。この島に字を読み書き出来るやつはあまり多くないし、おれもまだ読めないが、あいつは普通に新聞を読んでいるし手紙を返している。新聞を通して島の外のことも詳しくて、最近噂の剣士の武勇伝を道場のみんなによく語って聞かせてくれた。


あいつは剣の才能が無くて弱いけど、それを補う強みや強さがある。
剣の強さばかり見ているおれにとって、それは紛れもない衝撃だった。

3話→←1話



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (345 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
639人がお気に入り
設定タグ:ONEPIECE , ゾロ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

たかこ(プロフ) - 続編楽しみにしてます!! (2022年7月5日 22時) (レス) @page45 id: 2079c866b2 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:雅榴 | 作者ホームページ:http://なし  
作成日時:2022年3月11日 4時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。