検索窓
今日:13 hit、昨日:0 hit、合計:255,914 hit

第27話、謝罪 ページ29

赤井の部屋は、マンションの丁度中間部分にあった。
必要最低限の物だけが置いてあり、娯楽用と思える物は何もない。テレビでさえも、である。
その部屋の中にある茶色いソファに、赤井は凛をそっと降ろした。そのままキッチンに足を運ぶと、珈琲の入った白いマグカップを凛の前に差し出した。

「砂糖は一つだけで良かったかな?」
「…」
「…」

赤井は何も言わず俯いている凛の隣に座ると、懐から煙草とマッチを取り出して吸い始めた。

白い煙が2人の間を漂い、部屋の四方に広がって行く。テーブルの上にある灰皿の底は見えず、真っ黒な灰で覆い尽くされていた。

「…」
「…、何で」
「ん?」

小さなその声を確認するように赤井が凛の顔を覗き込む。
目を細めて眉間に皺を寄せ、かと言って怒っている訳ではなく、どこか悲しそうな雰囲気。

「私、言いました、よね」
「何をだ?」
「…二度と現れないで、って」
「言われたな」
「…なら、何で」
「ブランデーに言われたんだ。お前の事を考えろ、とな」

ブランデー。その名を耳にした瞬間、凛は目を見開いて赤井を見た。
血色の目が、まっすぐ赤井を見据えた。その間は僅か数秒で、凛はすぐに目を逸らそうとした。

それと同時に、赤井の左手が凛の頰に添えられ、凛は再び正面を向いた。

「聞いてくれ」

低いトーンで赤井はそう言い、懇願するように目尻を下げ、そして口を開いた。


「…すまなかった」

発したのは、謝罪の言葉だった。
思わぬ言葉に凛は目を見開いたが、赤井はどこか満ち足りたように微笑み、そして自身を嘲笑するように目を細めた。

「やっと、言えた。







ずっと、謝りたかったんだ。【コナン】の事を」

凛の肩がピクリと動いた。銀髪が揺れて、赤井の肩に緩くかかった。

「…っ、」

唇をキュッと噛み締めて、赤井の服の裾を弱々しく掴む。

ポロリと、涙が凛の瞳から流れた。

28話、過去編、←26話、変わらない笑み



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.6/10 (48 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
177人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ポッキー(プロフ) - 家族構成を詳しく教えてください! (2018年8月22日 1時) (レス) id: 7540b7af18 (このIDを非表示/違反報告)
Maho(プロフ) - 読ませていただきました!とても面白かったです! (2018年7月13日 23時) (レス) id: e66d7d83c8 (このIDを非表示/違反報告)
扇スバル(プロフ) - 紗那さん» き、気に入ってるなんてそんな、ありがとうございます!△任垢諭投票ありがとうございました! (2017年5月17日 1時) (レス) id: 67fea2266c (このIDを非表示/違反報告)
紗那 - 初めまして(*^_^*) 見つけてから 何度か読む直したりしていますが、とても気に入っています(^^♪ 描くのが大変かもしれませんが、私は△任願いします。 (2017年5月17日 0時) (レス) id: ed92358fdf (このIDを非表示/違反報告)
扇スバル(プロフ) - yunaさん» はい、△任垢諭投票ありがとうございます! (2017年5月16日 16時) (レス) id: 67fea2266c (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:扇スバル | 作成日時:2017年4月23日 2時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。