第27話、謝罪 ページ29
赤井の部屋は、マンションの丁度中間部分にあった。
必要最低限の物だけが置いてあり、娯楽用と思える物は何もない。テレビでさえも、である。
その部屋の中にある茶色いソファに、赤井は凛をそっと降ろした。そのままキッチンに足を運ぶと、珈琲の入った白いマグカップを凛の前に差し出した。
「砂糖は一つだけで良かったかな?」
「…」
「…」
赤井は何も言わず俯いている凛の隣に座ると、懐から煙草とマッチを取り出して吸い始めた。
白い煙が2人の間を漂い、部屋の四方に広がって行く。テーブルの上にある灰皿の底は見えず、真っ黒な灰で覆い尽くされていた。
「…」
「…、何で」
「ん?」
小さなその声を確認するように赤井が凛の顔を覗き込む。
目を細めて眉間に皺を寄せ、かと言って怒っている訳ではなく、どこか悲しそうな雰囲気。
「私、言いました、よね」
「何をだ?」
「…二度と現れないで、って」
「言われたな」
「…なら、何で」
「ブランデーに言われたんだ。お前の事を考えろ、とな」
ブランデー。その名を耳にした瞬間、凛は目を見開いて赤井を見た。
血色の目が、まっすぐ赤井を見据えた。その間は僅か数秒で、凛はすぐに目を逸らそうとした。
それと同時に、赤井の左手が凛の頰に添えられ、凛は再び正面を向いた。
「聞いてくれ」
低いトーンで赤井はそう言い、懇願するように目尻を下げ、そして口を開いた。
「…すまなかった」
発したのは、謝罪の言葉だった。
思わぬ言葉に凛は目を見開いたが、赤井はどこか満ち足りたように微笑み、そして自身を嘲笑するように目を細めた。
「やっと、言えた。
ずっと、謝りたかったんだ。【コナン】の事を」
凛の肩がピクリと動いた。銀髪が揺れて、赤井の肩に緩くかかった。
「…っ、」
唇をキュッと噛み締めて、赤井の服の裾を弱々しく掴む。
ポロリと、涙が凛の瞳から流れた。
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ポッキー(プロフ) - 家族構成を詳しく教えてください! (2018年8月22日 1時) (レス) id: 7540b7af18 (このIDを非表示/違反報告)
Maho(プロフ) - 読ませていただきました!とても面白かったです! (2018年7月13日 23時) (レス) id: e66d7d83c8 (このIDを非表示/違反報告)
扇スバル(プロフ) - 紗那さん» き、気に入ってるなんてそんな、ありがとうございます!△任垢諭投票ありがとうございました! (2017年5月17日 1時) (レス) id: 67fea2266c (このIDを非表示/違反報告)
紗那 - 初めまして(*^_^*) 見つけてから 何度か読む直したりしていますが、とても気に入っています(^^♪ 描くのが大変かもしれませんが、私は△任願いします。 (2017年5月17日 0時) (レス) id: ed92358fdf (このIDを非表示/違反報告)
扇スバル(プロフ) - yunaさん» はい、△任垢諭投票ありがとうございます! (2017年5月16日 16時) (レス) id: 67fea2266c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:扇スバル | 作成日時:2017年4月23日 2時