四つ葉のくろーばー (ページ2)

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桜side

翔くんと結婚して３年がたった時、私たちに子供を授かる事は
難しいっていう結論に達した。

二人で話し合ってやってきたけど、終わりにしようって決めた。

決断して半年がたった頃、翔くんに５歳の男の子を家族として
迎えたいって相談された。

いつかはって話し合っていたから、もちろん賛成。

翔くんの患者さんで、２ヶ月ほど前に育児放棄で保護されて
入院中らしい。

若い両親のもとに少し早く産まれた潤くんは、身体が弱くて、
発達もゆっくり目で育児が大変だったらしい。

そのうち、幼い潤くんをアパートに残して遊び歩くようになり
育児放棄で逮捕されたとのこと。

両親ともに潤くんを育てる意思がないことが確認されている。

通常、施設で暮らすことになるから、手続きも進められていた
らしい。

でも、身体が弱いことや発達がゆっくり目なことが引っかかって、
施設が決まらなかった。

話し合いを進める中で、「できれば、施設ではなく静かな環境で
潤くんのペースで成長できる一般家庭が望ましい」という話が
持ち上がって、それが翔くんの中で決定打になったと言っていた。

両家の両親に説明したり、行政の手続き、翔くんが小児科医、私が
看護師資格を持っていることで免除されたものも多いけど、研修もあった。

もちろん、その間に潤くんとの面会、我が家への外泊を繰り返した。

晴れて、我が家の一員になった潤くん。

我が家へきて３日目、熱を出した。

「よしよし、ちょっとお熱測ろう」翔くんが体温計をはさもうとすると
泣き出した。

入院した頃はされるがままで無表情だったけど、最近は喜怒哀楽の意思表示が
出てきた。

「いやだね、すぐ終わるよ」って翔くんが声をかける。

まだ意味のある言葉は出てこないけど、うれしそうな声、いやそうな声を
発することは格段に増えた。

自分のおかれている状況を大人が思っている以上に理解している感じ。

だから、白衣を着た翔くん、聴診器、体温計なんかを見ると泣き出す。

受けられていない予防接種を急いでやっているせいもあると思う。

びっくりするぐらい、大きな声で泣いている。

「おしまい、おしまい、がんばりました」

大泣きで測った体温は３８度。

翔「潤ちゃん、しんどいね〜」