第84話 ページ6
「__婚約指輪、のつもりだったんだが、もはやただの形見だ。他の男ができたら外してくれて構わねェ」
「そんな……そんなこと言わないで! 私は総悟と一緒に生きていきたい!」
ミライは目から大粒の涙を流しながらそう言ったが、総悟はただ首を横に振るだけだった。
「俺の分まで、生きろ。前向いて、誰か他の奴と一緒になって、幸せに生きてくれ。本当は俺がおめェを幸せにしてやりたかったが、おめェが笑顔でいてくれるなら……俺ァそれでいい」
総悟はミライの頬に手を添えた。かつて姉のミツバがそうしたように、そっと、優しく。
その温もりがさらに涙腺を緩ませる。
「総悟……」
ミライは弱々しいその手に自分の手を重ね、すべり落ちないようにぎゅっと握った。
「こんな野郎でも愛してくれて、俺ァ、嬉しかったぜィ……A……礼を言い……ま……さ……」
そう言ったのを最後に総悟は目を閉じ、それきり動かなくなった。
「……そう、ご? 総悟? ねえ、目を開けてよ。ドッキリだって、笑ってみせてよ……!」
いくら呼んでも、もう届かない。
力の抜けたその手を握りしめたまま、ミライはただ身体を震わせて泣いた。
総悟の頬に落ちた雫がきらりと光る。
その日は澄みきった青空が広がっていて、
悲しいくらいに美しかった。
- 金 運: ★☆☆☆☆
- 恋愛運: ★★★☆☆
- 健康運: ★★★★★
- 全体運: ★★★☆☆
236人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:yunami☆彡 | 作成日時:2022年5月6日 12時