第90話 ページ12
顔を上げると、すぐ目の前にある赤い瞳が私を見つめている。あまりに近すぎて、胸の鼓動がいつになく高まっているのが嫌でもわかる。抱き寄せられて密着した身体を通して、それが伝わっているかもしれないと思うとまた恥ずかしい。
この状況、どうすればいいの……?
するとふいに総悟が視線を外し、私の耳元に顔を寄せた。
「総悟?」
微かに当たる吐息がこそばゆい。けれどなにか言いたいことがあるのだろうと、じっと言葉を待つ。
総悟がすっと息を吸い、そして__
「好きだ」
「……え」
発されたその一言の衝撃は大きくて、すぐには理解が追いつかない。
彼は今なんと言った?
私は今なんと言われた?
「すき、って」
"すき"って、何?
……いやいや、落ち着け、私。
こんな状況で口にするその二文字なんて、ひとつしかないだろう。
「好きって……そういうこと?」
「ああ。おそらくその認識で間違ってねェ」
つまりLikeではなく、Loveのほうだということだ。
「冗談じゃなくて? そういうことを言うのは2次元だけに……」
「この状況でわざわざ虚言を吐くような奴がいたとすれば、それこそ空気読めって話でィ」
それは……まあ否定しない。
でも本当に、冗談ではないんだ。
「惚れてんだよ、お前に」
総悟の熱のこもった声。
ここで私は、ミライがああ言い残した意図をなんとなく察した。でもなんというか、実感が湧かない。
だって、総悟が私を好き、だなんて。
周りに散々あれこれ言われたし、本人も仄めかすようなそぶりを見せていたこともある。
その度に、そんなわけないって思っていた。
なのに、いざはっきりそうだと言われると。
(……調子が狂っちゃうよ)
なにせここは2次元だ。こうして推しキャラと話しているのだって本来あり得ないこと。
それだけでも飛び上がりそうなものなのに、好意を寄せられるなんて。
- 金 運: ★☆☆☆☆
- 恋愛運: ★★★☆☆
- 健康運: ★★★★★
- 全体運: ★★★☆☆
235人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:yunami☆彡 | 作成日時:2022年5月6日 12時