そういうところ ページ13
飲み物を買いに行って部室に戻ってきたら、なぜか急にみんなが帰ってしまった。どうしたんだろうと私が思っていると、
「みんな、気ぃ使って帰ってくれたな」
と机に突っ伏していた千空が突然言い出した。
そうか、気を使って帰ってくれたのか…って
「え?誰に気を使って帰ったの?」
私がそう言うと、
「は?無自覚かよ。アイツら、テメェと俺の落ち込んだツラ見て気まずくなったんだよ」
と千空は言う。
「うっ、それか」と、自分の事で部員達が帰ってしまったのが私は申し訳なくなってきた。
……そういえば、どうして千空も落ち込んでいたんだろう。
「俺も今日はやる気でねぇ。うちは、運動部と違って別に厳しくないから帰るわ」
聞いてみようかと思ったが、千空が珍しく「帰る」と言い出したので、また今度でいいかと聞くのをやめた。
「私も今日は帰ろうかな。家に帰って横になりたいし。あー体ダルおも……」
私も、今日は討論したり悩んだりと疲れたので帰ろうとした……が、
「え、大丈夫か?」
急に千空が私の方を見て、そう聞き返してきた。
「体、ダル重いんか」
「え、う、うん」
予想もしていなかった言葉が千空の口から出たため、私は少し動揺した。
そして、千空は自分の腕時計を見て言った。
「よし、今ならまだ保健室の先生はいるはずだ」
「行くぞ」と同時に千空が私の手を掴み、グイと引っ張った。しかし、それを私は反射的に抵抗してしまったため、千空に手を掴まれたまま互いに引っ張り合う状態になってしまった。
「えっ!ちょっ、千空!?」
「なんだよ!……って顔赤ぇぞ!!やっぱ熱でもあるんじゃねぇのか!?」
どうやら千空は、私の体調が悪いのではないかと思っているらしい。
好きな人に手を掴まれたら顔くらい赤くなるよ!?……なんて言えるわけもない。
「い、いや!大丈夫!」
私がこう言うが全く聞いてくれない。
「もし風邪だったらどうすんだ!?とりあえず行くぞ!デカブツ!帰るなら、先帰ってて良いからな!!」
結局、千空が諦めてくれないので私のほうが折れることにし、大樹君と杠を残したまま、されるがままに私は保健室まで引っ張られていった。
さっき千空と手を掴みあったときはなんともなかったのに、今は握られているところから熱が広がっていく。
こういう時に心配してくれるから、もしかしたら…なんて勘違いしてしまうのに……
私の手を引く千空の背中を見ながら、私は全身が熱くなっていくのを感じていた。
キューピッド(大樹・杠side)→←だって気まずい(部員side)
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のの - おもしろすぎませんか? (2022年4月26日 19時) (レス) @page50 id: 39b5b02acb (このIDを非表示/違反報告)
鳥ゐ(とりい)(プロフ) - Nebelさん» コメントありがとうございます!こうして言葉として感想をいただけるのは、より嬉しくなりますね!これからも頑張ります!!! (2021年1月30日 23時) (レス) id: e1991bef49 (このIDを非表示/違反報告)
Nebel(プロフ) - 初コメ失礼します!ワイはこの手の話が大好きなんで、心情舞い上がっております(笑) 続きも楽しみにしています!頑張ってください!( `・∀・´)ノ (2021年1月28日 0時) (レス) id: 758ebcb85a (このIDを非表示/違反報告)
鳥ゐ(とりい)(プロフ) - スモモさん» そう言ってもらえて嬉しいです!ありがとうございます!! (2021年1月7日 23時) (レス) id: e1991bef49 (このIDを非表示/違反報告)
スモモ - ヴっ!!!いい!すごくいいっ! (2020年12月1日 22時) (レス) id: ba34499442 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鳥ゐ(とりい) | 作成日時:2020年8月7日 22時