取材〈島崎藤村〉 ページ9
新聞はすごい。
その日その日に書かれていることが違っていて、それを半日でやっているのかと思うと感嘆する。
これも取材してくる新聞記者さんのおかげだろう。
「ねぇ、今どんな気分?」
…しかし、取材される方の気持ちはきちんと尊重しなくてはいけないのは忘れないようにしなくては。
『藤村…毎日寝起きに聞いてくるのはちょっと…』
島「そう…ごめんね…」
そう消えそうな声で云うと、まるでそのまま消えてしまうのではないかと思えるくらい静かに私から離れてしまう。
『あ…怒ったわけじゃないから!!ちょちょ、ちょっと待ってね?!今の気分だよね?!!』
慌てて呼び止め、覚めきっていない頭をどうにか覚醒させてフル回転させる。
考えろ!!毎朝のことだろ?!!
とうの藤村は期待の眼差しでこちらを見てくる。
そんな仔犬が餌を嬉々として待っている様な目で見てくるなんて…!やりづらい!!
ぐぅぅぅぅ…。
一瞬なんの音が鳴ったのか分からなかった。
『へ…?』
島「…Aのお腹が鳴ったね」
藤村に指摘されてようやく気がついた。
鳴ったのは私の腹かっっっ!!!
顔に熱が集まっていくのがよくわかる。これは恥ずかしい。嫁入り前の女が…。
『…恥ずかしい』
島「それが今の気分?」
『そう…』
藤村は嬉しそうに取材ノートにメモを取っていくが、正直に云って恥ずかしいからやめてほしい。
よりによって取材中の藤村に聞かれるとは…。
…それにしても、お腹すいたな。
『…今日の朝ごはんなんだろ』
何気なく云い放った言葉だったのにもかかわらず、藤村はアホ毛をピクピク動かしながら書き留めていたペンを止めて此方を見てきた。
島「Aは…確か肉じゃがだった…」
『おー!肉じゃがー!!…ん?』
え、なんで知ってるの…?
島「なんで知ってるのって云いたそうな顔だね…さっき食堂も取材してきたから…序でに聞いてきたんだ」
『な、成る程…』
ちょ、ちょっと待って。今表情見ただけで当てたよね…?
人の表情見ただけで感情を手に取るようにわかるなんて…超能力者だよそれ…。
『良く解ったね、表情見ただけで解るなんて…w』
取材熱心なのはいいことだけどと苦笑しながら云ってみると、藤村は違うよ…と返した。
島「君を主人公にした小説を書こうと思ったんだ…感謝の印に」
駄目だったかなと見てくる藤村は、心なしか心配そうだった。
感謝の印に…。
『…そっか、楽しみにしてるね』
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結愛 - 文アル歴早三年このお話お気に入りになった (2023年3月18日 22時) (レス) @page9 id: 5309fc8273 (このIDを非表示/違反報告)
法蓮草(プロフ) - 最中さん» わー!!ありがとうございます!!!これからも精進していきたいと思います!! (2018年8月27日 22時) (レス) id: 6397094652 (このIDを非表示/違反報告)
最中 - 文アル最近始めたんですけど、この小説好きです!これからも頑張って下さい! (2018年8月27日 1時) (レス) id: 4af8f25fc3 (このIDを非表示/違反報告)
法蓮草(プロフ) - 下野月さん» わー!ありがとうございます!!これを励みにもっともっと頑張ります!!(°▽°) (2018年5月15日 14時) (レス) id: 6397094652 (このIDを非表示/違反報告)
下野月(プロフ) - いつも読ませてもらってます!法蓮草さんの書く小説は本当に大好きです!これからも頑張って下さい! (2018年5月15日 13時) (レス) id: 18e714d719 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:法蓮草 | 作成日時:2018年4月6日 21時