畑〈武者小路実篤〉 ページ7
弊図書館には中庭に畑がある。
自給自足をして少しでもお金を使わない様にしているらしい。確かに、文豪さん増えたし。
そんな中庭にふらっと立ち寄った時だった。
「あ!Aさーん!!」
大声で呼ばれた方に目線を向けると、麦わら帽子を被り首にタオルを巻いた男性が此方にブンブンと手を振っていた。
相変わらず理想と夢を実現するために努力している方だ。
『何ですかー!武者先生!!』
私も負けじと大きく手を振りながら武者先生に近づくと、武者先生は足元にあった籠をずいっと前に差し出してきた。
その顔は子供が自分の作ったものを自慢するときの顔に似ていた。…可愛い。
武「見てください!こんなに野菜が育ったんです!」
『わっ、こんなにいっぱい!』
籠の中には溢れんばかりの色とりどりの野菜が此方を見ていたが、私にはその視線を完全無視してある所をガン見してしまう。
『えっと、武者先生…?』
武「?どうしました?」
『…せっかくの白い服が泥だらけですよ』
そう指摘すると、あれ!本当だ!と驚きながらも嬉しそうに笑う武者先生を不思議に思いながらもハンカチで軽く落としてあげる。
白樺派の方達はアウトドア派が多い…。
なら何故こんな白い服を…。
武「わわっ、すみません!ハンカチが…!」
『あ、別にいいですよ。志賀先生もよく自転車かっ飛ばして泥んこで帰ってくるので』
そう思うと白樺派は子供みたいな人の集まりか。
なら泥んこで帰ってきても仕方なし。
謎に納得してしまった。
ハンカチを軽くたたみ込んでポケットの中にしまおうとした瞬間、武者先生はあっ!と云い私のハンカチを掴んだ。
武「あの、それ洗って返します!」
『え…?洗濯などは主に司書の仕事ですけど…』
そう、この図書館は洗濯、料理、掃除は大体司書の仕事として回されている。
いや、確かに文豪さん達の特技に合わせて手伝ってもらってることもあるけれど…。
武「いえ、僕がやります!やらせて下さい!」
『え、あ、そこまでおっしゃるのなら…』
どうぞ…とハンカチを武者先生の手のひらに乗せると、武者先生は壊れ物を扱う様にそっと優しくハンカチを両手で包んだ。
武「では、楽しみにしててください」
『は、はぁ…』
楽しみに…?
後日、返ってきたハンカチの上に白い花が置かれていた。
『…ホワイトレースフラワー…?』
成る程、これはちょっと嬉しいかも。
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結愛 - 文アル歴早三年このお話お気に入りになった (2023年3月18日 22時) (レス) @page9 id: 5309fc8273 (このIDを非表示/違反報告)
法蓮草(プロフ) - 最中さん» わー!!ありがとうございます!!!これからも精進していきたいと思います!! (2018年8月27日 22時) (レス) id: 6397094652 (このIDを非表示/違反報告)
最中 - 文アル最近始めたんですけど、この小説好きです!これからも頑張って下さい! (2018年8月27日 1時) (レス) id: 4af8f25fc3 (このIDを非表示/違反報告)
法蓮草(プロフ) - 下野月さん» わー!ありがとうございます!!これを励みにもっともっと頑張ります!!(°▽°) (2018年5月15日 14時) (レス) id: 6397094652 (このIDを非表示/違反報告)
下野月(プロフ) - いつも読ませてもらってます!法蓮草さんの書く小説は本当に大好きです!これからも頑張って下さい! (2018年5月15日 13時) (レス) id: 18e714d719 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:法蓮草 | 作成日時:2018年4月6日 21時