列車〈川端康成〉 ページ45
街に遠出して買い物をした帰り道の列車内。
一定のリズムで揺れる列車は、幼い頃にいたゆりかごの感覚を思い出させた。
あの頃は何もかもが夢を見るような感覚だったな。
うとうとしてきた頭を揺れに合わせて揺らしていると、前に座っていた青年がそれに気づいたように紙袋を微かに抱き寄せて身を此方に倒してくれる。
「…眠いですか」
『えっと…はい、少し』
ごめんなさい…まだまだあるのに…と目を勢いよく擦って眠気を覚まそうとしたが、青年…川端先生はその擦っている手を掴む。
少し困惑しながら川端先生を見てみると、目で「擦ってはいけません」と訴えてくださっていた。
目でわかるなんて…川端先生は犬かな？
心の中がぽわぽわする感覚を覚えて、にやけかける顔を抑えながら『はい』と応答する。
川「痕になったら、嫌ですから…」
『そんな。目を擦るだけですから、痕になるなんてことありませんよ。大丈夫です』
くすくすっと遂に笑ってしまうと川端先生はじっと此方を見て掴んでいた手を目元に持ってきた。
体温が低いのか、少しひんやりしている。
夏場は重宝しそうだなぁ。
超関係ない事を思っている私とは裏腹に、川端先生は真剣な顔付きをしながら見つめてくる。
川「少し、赤くなっています…」
『え、そうですか？…そこまで強く擦ったかな？』
でも図書館への最寄り駅まではまだ全然あるし、ほっとけば治るだろう。
心配おかけしてすみませんっと笑い返すと、川端先生はまだ心配なのか眉尻を少し下げていた。
犬だ、この人。反応が犬だ。
『大丈夫ですよー…ふぁ』
欠伸が出た。
大口開けて、川端大先生の前で。
耳の隅まで熱がともっていくのが良く分かる。
恥ずかしさで一回顔を隠そうとして両手を顔の元に持っていったが勢い余って顔面を叩く形になった。
痛いッ。
顔面を隠すのもそうだけど痛みを紛らわすために両手を覆って『くぅぅぅ』っと言い地団駄を踏む。
すると川端先生は食料や備品などが入った紙袋を両手で抱えると腰を少しあげて私の隣の席に座った。
そしてまた此方に何も言わずに見てくださる。
『…先生？なんです…かッ？！！』
【か】のところで川端先生に腕を引かれて、私の頭が川端先生の肩に乗っかる。
なんて事をしたんだ私。
何も言えずに石のように硬直していると、川端先生は私の耳付近に口を近づけて小さく言った。
川「今日はよく頑張りました…少しの間ですが、ゆっくり休んでください…A」
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結愛 - 文アル歴早三年このお話お気に入りになった (2023年3月18日 22時) (
レス) @page9 id: 5309fc8273 (このIDを非表示/違反報告)
法蓮草(プロフ) - 最中さん» わー！！ありがとうございます！！！これからも精進していきたいと思います！！ (2018年8月27日 22時) (レス) id: 6397094652 (このIDを非表示/違反報告)
最中 - 文アル最近始めたんですけど、この小説好きです！これからも頑張って下さい！ (2018年8月27日 1時) (レス) id: 4af8f25fc3 (このIDを非表示/違反報告)
法蓮草(プロフ) - 下野月さん» わー！ありがとうございます！！これを励みにもっともっと頑張ります！！(°▽°) (2018年5月15日 14時) (レス) id: 6397094652 (このIDを非表示/違反報告)
下野月(プロフ) - いつも読ませてもらってます！法蓮草さんの書く小説は本当に大好きです！これからも頑張って下さい！ (2018年5月15日 13時) (レス) id: 18e714d719 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：法蓮草 | 作成日時：2018年4月6日 21時
