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信用〈小林多喜二〉 ページ20

誰かを信用するとき、それなりの時間が必要だ。

それにその人との距離感や価値観が少しでも狂ってはいけない。そう思いながら生きてきた。


「おはよう、A」

『…あ、多喜二。おはよう』


そう云って微笑み返したけれど、私は今あまり元気がなかった。


と云うのも変な夢を見たのだ。





知らない人が此方に手を伸ばしてきた。

何でかわからないが此方も手を伸ばしてその手を掴もうとした時、後ろから叫び声が聞こえてくる。


〈その手を掴むなッ!!!〉


でもその声が聞こえたのは掴んだ後で。

次の瞬間、目の前が真っ暗になった。

私は怖くなって逃げるように走り出す。

止めちゃいけないと解っていても人間疲れるもの。


足を止めてしまいたいという思いが脳をかすった。


その思いに支配された時、タイミングよく目が覚めた。という夢だった。

我ながら変な夢をよく見る。


多「…元気、ないみたいだな。どうした?」

『へ?!そ、そんなことないそんなことない!!』


気がつけば多喜二が此方の顔を覗き込んでいた。

駄目だ、こんな顔しちゃ。

要らぬ心配をさせてしまったらいけない。

頑張らなきゃ、頑張らなきゃ、頑張らなきゃ…。


笑え。

笑わなきゃ。

どうやって?

どうやって笑ってたっけ。

…あれ?


多「…………何か、あったんだろ」

『…へ?そ、そんなことないよ…』


何で解ったの。

解られちゃ駄目だ。

どうしよう、どうすれば、どんな風に…!


多「俺は、Aの事を信用してる」


いきなり多喜二がそう云った。

本当にいきなりのことで反応に困った。


『…えっと…?』

多「あ、だから…信用してるから、変な心配とかしなくていいよ。きっと、さっきから俺に気を使ってくれたんだろ?」


多喜二は優しく微笑むと首を横に傾けた。


多「何かあったら二人で抱え込んだ方が少しは楽になるだろ?なら俺がAの不安を和らげるから」


…そっか。

解っちゃうものなんだな。

多喜二には敵わないなぁ。



『ごめんね、多喜二』

多「気にしないでよ」

『話、聞いてもらってもいいかな?』

多「うん、任せて」

*研究〈尾崎紅葉〉→←酒〈中原中也〉



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結愛 - 文アル歴早三年このお話お気に入りになった (2023年3月18日 22時) (レス) @page9 id: 5309fc8273 (このIDを非表示/違反報告)
法蓮草(プロフ) - 最中さん» わー!!ありがとうございます!!!これからも精進していきたいと思います!! (2018年8月27日 22時) (レス) id: 6397094652 (このIDを非表示/違反報告)
最中 - 文アル最近始めたんですけど、この小説好きです!これからも頑張って下さい! (2018年8月27日 1時) (レス) id: 4af8f25fc3 (このIDを非表示/違反報告)
法蓮草(プロフ) - 下野月さん» わー!ありがとうございます!!これを励みにもっともっと頑張ります!!(°▽°) (2018年5月15日 14時) (レス) id: 6397094652 (このIDを非表示/違反報告)
下野月(プロフ) - いつも読ませてもらってます!法蓮草さんの書く小説は本当に大好きです!これからも頑張って下さい! (2018年5月15日 13時) (レス) id: 18e714d719 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:法蓮草 | 作成日時:2018年4月6日 21時

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