帝國図書館日乗！

良い悪戯〈江戸川乱歩〉 ページ17

今日は春なのに最高気温が高い。

もう一度解りやすく云おう、クソ暑い。


『…んだぁぁぁぁ！！！あっついわボケェェ！！』


怒りに身を任せて仕事机を蹴り飛ばす。

その衝撃で机の上に乗っていた本や資料が踏ん張ることなくドサドサと落ちた。

あぁ…鏡花先生に怒られる…まぁ、いっか。

なにせ本当に暑い。

服に汗が纏わり付いて気持ち悪い。汗を拭っても拭っても直ぐに出てくる。

しかも暑いのは続くと云う。


『せめて何か涼しくなれれば…』


そう不満をこぼし項垂れていた、その時。


「ワタクシを呼びましたか？！Aさん！！」

『呼んでません、云ってません』


扉を勢いよく開けながら青い天災が来た。

誰の名前も云ってませんよ、乱歩先生。


乱「 ふふふ、涼しさをお望みですね？」

『だから呼んでないですって』

乱「それならばワタクシが何とか致しましょう！」

『…聞いてくださいよ』


蒸していた司書室が更に蒸し返った気がする…。

と云うのも、乱歩先生の服装が暑苦しい。見てるこっちがぶっ倒れそうだよ…。

せめて見るなら冬が良かった。色は涼しいけど。


『乱歩先生、お化け屋敷は間に合ってますよ』

乱「おや、何時ワタクシがそのような手に染めましたか？心外ですね」

『この間の白い本内で散々からかったくせに。此方の方が心外です』


本当に冗談抜きで怖かったんだから…。


乱「あぁ、その件はどうも！しかし今回は魑魅魍魎はナシの傾向なので、ご安心下さい」

『…ほー？どんな案です？』

乱「それはですね…」







ジリジリと照りつける太陽。足元にあるのは図書館敷地内にある芝生。周りを囲む文豪さん達。

そして私たちの手に握られた水鉄砲諸々。

私は周りをぐるりと見渡すと、ホースを持っていた右手を大きく空に上げ、そして下ろした。


『…さぁ！！かかれーー！！！』


その声と共に飛び交うわ水水水。

辺り一面が水浸しになったって知るものではない。

何せここは芝生だし？！館長からの許可もちゃんと取ってきたから大丈夫だし！！


乱「Aさん、楽しんでいますか？」

『乱歩先生！はい！楽しんでますよ！！それにしても、乱歩先生がマトモな案を出されるなんて…驚いちゃいました！』

乱「ふふっ、エンターテイナーとして当然のことをしたまでです」


そう云うと、乱歩先生は長いマントを翻して左人差し指を口に当てながらウインクをした。




偶にはこういう悪戯も良いものでしょう？

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