こころ〈夏目漱石〉 ページ1
『あ』
図書館を徘徊中、懐かしい題名が目に飛び込んできて思わず声を上げて立ち止まってしまった。
私は導かれるように本に手を伸ばして、そっと傷つけないように少し黄色くなった背表紙を指でなぞる。
そこには、達筆な字で【こころ】っと書かれていた。
夏目先生の作品。
私が文庫本の中で初めて読んでみた思い出ある本だ。
今こそ表記は平仮名で【こころ】っとされているが、昔は漢字で【心】っとされていたという。
確か発行寸前に漢字から平仮名に変えた…とか。
懐かしさを心に噛み締めながら本を引っこ抜いてみた時、【こころ】の隣にあった本も巻き込んでしまい一冊重力に抗うこと無く床に落ちる。
その衝撃でなのか、本は自我を持ったようにパラパラっと一人でに頁を捲り始める。
そして、中身は真っ白…ではなく、真っ黒だった。
ギョッとしても、もう遅い。
頁がいきなり捲れるのを止めると、いきなり止まった頁から洋墨が一体赤く光りながら出てきた。
よりにもよって参号か…!!!
チッっと舌打ちを噛ましながらも武器の錬金を始めるが、私が一番錬金しやすい武器が銃だからか反応するのに時間がかかってしまう。
何とか攻撃を一発交わしながら弾を込めると、標準を合わせてトリガーを弾いた。
しかしその弾は洋墨に掠っただけである。
世に言うmissだ。
『…ッ!だぁぁぁぁぁぁ?!』
ここで外すか、自分んんんんんんんんん!!!!
なんで参号が出てきたんだよおおおおぉ!!!っと内心悶えながら次にくる攻撃に備えて構えた。
途端、洋墨が目の前で真っ二つに引き裂かれる。
驚きで声が出るのも忘れて、洋墨だったものが宙を舞ってただの墨汁をぶちまけながら消えてなくなった。
ひ、ひぇ…。
安堵からか私はそのまま武器をしまいながら床にヘタレる。我ながら情けないとは思うけれど…。
するとお相手も武器をしまいながら此方を何処か慌てた様子で振り返った。
「ご無事ですか?Aさん」
『は、はい、ありがとうございます。夏目先生』
すると夏目先生は胸を抑えながらほっと息をついた。
夏「よかったです。もしも遅くなっていたら…」
『あはは…本当にすみませんでした』
私は苦笑いを浮かべながら夏目先生から目線を外して、持っていた本…【こころ】に目を移した。
その中に書かれている私の好きな文の重みを改めて思い出し、その味を忘れない為に。
『私はまだ生きていた。死ぬのが嫌であった。』
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松野霊夢 - 尾崎さんを書いてはいただけないだろうか?あの神を書いてはいただけないだろうか (2020年4月10日 23時) (レス) id: 3ec8f52487 (このIDを非表示/違反報告)
饅頭茶漬けヽ(*≧ω≦)ノ(プロフ) - あのぉ、リクエストいいですか・・・?えっと太宰と読書をテーマに書いていただきたいのですが。 (2018年12月12日 16時) (レス) id: 42dbdbace3 (このIDを非表示/違反報告)
法蓮草(プロフ) - 翡翠石さん» リクエストありがとうございます!!了解しました!!! (2018年12月6日 7時) (レス) id: 6397094652 (このIDを非表示/違反報告)
翡翠石 - リクエストいいですか?志賀先生とハロウィンで、司書さんが、イタズラされるのをお願いします! (2018年12月4日 18時) (レス) id: f23e64e53d (このIDを非表示/違反報告)
法蓮草(プロフ) - 伊露葉月さん» 人をダメにするやつですwwwありがとうございました!!! (2018年11月24日 13時) (レス) id: 6397094652 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:法蓮草 | 作成日時:2018年9月21日 7時