3話 ページ3
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「そんじゃ、俺らは部活やりますかー」
「いよっしゃ、柔軟すんぞー」
小見さんの掛け声によって、部員達はそれぞれ自分のスペースを確保するべく散らばり始める。
「じゃあAちゃんはちょっとここで待っててね〜」
「順番に説明したいから、準備してくるね」
「分かった」
マネージャーの二人は二人で、そう言い残し去っていった。
俺は、というと。
ずっと会いたかった人を前にして、話したい気持ちが大きすぎて。
縫い止められたように、動けないでいた。
きょとんとした目で見られるのもしょうがない。
動かないのは、俺だけだ。
「えっと……赤葦京治、です。二年の」
「あ、白福です。二年です」
終了。
会話ってこんなに難しかったか?と頭の中では冷静に疑問が浮かぶ。
大して暑くもないのに汗が滲んでくる。
もちろん冷や汗だ。
それでも何とか彼女から目を逸らさずに、次の話題を探していると、「あの、」なんて声がかかって。
「何組……?」
おずおず、あちらも探り探りといった様子でそんな質問を投げかけられた。
ほっとしたと同時に、ひどく、嬉しかった。
「六組。白福さん、は被るな……白福、は?」
「三組」
「あ、頭いいクラス」
「違うよ。英語だけで集められるの。他はそんなに」
なんて単純、かつ簡単。
白福の方から話題を振ってくれた、ただそれだけで。
ただそれだけが、こんなにも嬉しい。
ずっと下の方で肩を竦ませる白福。
募らせた想いの大きさを、今知った。
「あ」
「え?」
「分かった」
なにが?と困惑する白福との目線を、ぐっと近づけた。
覗き込むようにやさしく、屈んだ。
多分これだ、白福が怖がる理由。
「これからよろしく、白福」
びっくり、という文字が見えるくらいに瞳が真ん丸くなる。
薄紅色の唇から、息だけがそっと漏れて、すぐにきゅっと結ばれていく。
安堵したように、柔らかく、笑ってくれた。
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飛鳥(プロフ) - シェルファさん» コメントありがとうございます!お待たせしてしまい申し訳ありません今公開しました!引き続きよろしくお願いします! (2019年6月30日 15時) (レス) id: d93720a371 (このIDを非表示/違反報告)
シェルファ(プロフ) - あー、早く続編が見たいです! (2019年6月30日 11時) (レス) id: ed405ee373 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:飛鳥 | 作成日時:2019年5月4日 23時