三百四十四通目 ページ45
その一件から数日後、Aはくられ先生と共に、山の麓のナーサ村に降りた
ちょっとした買い出しだ
暦の上では十月だった故に、Aの冬用の服を選びに行った
ロングコートとスキニージーンズという、簡素ながらも暖かな一式を購入して
食材もたんと買うと、二人は荷運び兼帰りの馬車に物品を預け、村でも程々に人の来る喫茶へ寄ったのだった
二人で談笑をして、時間は過ぎ
Aはくられ先生にふと、あの鏢の話をしようと、件の品を腕から剥がし、茶や甘味皿の乗せられた机の上に置いた
異常があったのはちょうど、その時
Aが机においたであろうタイミングと、ぴったりに、である
ふと茶屋奥の厨房から、焦げ臭い匂いがした
調理に失敗した、というようなものではない
油混じりの匂い
そしてだんだんと訪れるのは、息が詰まるような感覚
発熱したように体温の上がる体
「ッおい逃げろ、火がでてる！」
店の奥から、叫ぶような声がした
それを皮切りに皆はあわてふためき、一斉に店の外へと走る
幸いなことにさほど客が多い時刻でもなく、おしあいへしあいも怪我人も、出すことはなかった
だがしかしナーサ村は、他とは違い少し田舎の方にあるのだ
消化作業を行う業者がやって来るまでに、十分から二十分は悠に経過していた
業者が悪いわけではない、誰が悪いわけではない
ただ水消しが来るまで皆は、唖然として燃えゆく建物を見ていた
店内に放置したままだった荷物だとか、店がしらはこれからの経営について考えていたのではないだろうか
Aはただ、慌てておいてきてしまった鏢のことを惜しんでいた
もう少し──数月もすれば、兄さんがやってくる
その時にまた貰おうか、と
ようやっと消化が住んだ頃には、茶屋は骨組みを残して倒壊していた
「み、店が」
呆気に取られる皆の中、店長がぼそりとつぶやく
しかし村人達は、彼の背中を叩いて言うのだった
「なぁに！死人がでなかっただけましだ！建物なんて、俺達が直ぐに建ててやるよ！」
「一ヶ月もあればよよいのよいさ。それまでうちに来るかい？大将」
火事の後であれど、雰囲気変わらぬ村人達
統率というよりは結束だろうか
慰め、高め合うその様子をAは見つめていた
よい村だな、と
そんな時のこと
「あの、これ店長さんのですかね？」
火消しの一人が、何かを握って火事の跡から出てきた
「ちがうねぇ。なんだいこれ」
その手に握られていたのは
Aの鏢だった
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みたら士(プロフ) - 名無しの××さん» ありがとうございます……適度に休憩しつつ更新させていただきます、お待ちください！ (2020年1月3日 23時) (
レス) id: 88ea3ab685 (このIDを非表示/違反報告)
名無しの×× - この小説が大好きです。大変だとは思いますが更新頑張ってください。応援しております。 (2019年12月29日 15時) (レス) id: f98b79cb93 (このIDを非表示/違反報告)
みたら士(プロフ) - 妖那。さん» ついにですね……でももう少しで�柴�りそうになっちゃいました。ご心配ありがとうございます、ゆるりと更新していこうと思います (2019年12月22日 21時) (レス) id: 88ea3ab685 (このIDを非表示/違反報告)
みたら士(プロフ) - ブンブンさん» 満を持して登場です、続編来ちゃいました (2019年12月22日 21時) (レス) id: 88ea3ab685 (このIDを非表示/違反報告)
妖那。(プロフ) - ついにVIIですね…!体調を崩さない程度に更新頑張って下さい！ (2019年12月20日 22時) (レス) id: 4a3820ee7b (このIDを非表示/違反報告)
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