百八十五通目 【学園事件編】 ページ36
「Aおはよ」
校門をくぐる直前
右方から投げられた聞き覚えのある声に顔をむければ、いつもと変わらぬ笑顔で手を振るリイカがいた
「っ……あ……おはよう」
昨日の今日──二人して手枷をはめられたばかりということもあり、気まずさを感じるA
それもそうだろう
あれはもうほとんど冤罪なのだから
なかったことにされたからよかったものの、万が一あのまま牢に入れられていたらと思うと……
身震いがしそうになるのを、Aは苦笑いで抑えた
「ほうら何突っ立ってんの？今日朝会だよ、いそご！」
「っあ、うん！」
何食わぬ顔で先導し歩くリイカ
気にしていないのか、気に留めないようにしているのか
それはわからなかった
しかし、一番の被害者である彼女がそうしているのだから、Aが重く受け止めている意味はない
いつのまにか止めていた足を動かして、先へ行くリイカの背を追いかけた
彼女はAの心の支えに近いのかもしれない
──この関係が続くと良いなと、幾度思ったことだろうか
──────────────────
「えー近頃は様々なことが──」
ながったらしい校長の話
広い広い体育館の中心に朝礼台を置いて、その上に立つ老いた影
もう十分は話し続けているのではないだろうか
腕時計を見るために動けば、もしかしたら反対の腕の包帯が見えてしまう可能性があるために、確認することができないのだけれども
だがまぁ、いつもどおりか
そう思ってAは、一つ小さくため息を吐いた
──その、直後のことだった
バンッ
耳に残る、乾いた銃声
それと共に割れる照明の一つと、天から落下する鋭利なガラス片
発砲の発音点に目を向ける前に、場は混乱に陥った
「なんだよ今の？！」
「銃声？！」
「とにっ…とにかく逃げろ！」
人の流れが、一目散に出入り口へと動いていく
これでは、銃撃手の居場所も何もあったもんじゃない
いつもなら身を跳ねさせて驚いてしまう、教師たちの「落ち着け」などという怒声ですら、今は悲鳴に混じってよく聞こえなかった
とりあえず銃を持った人間をさがさなくては
──あぁでも、この人の波ではできない
どうにかして外に出さないように──
方法を思考し始めたその脳が、一瞬機能を止めた
ィィイイイイイインという機械音と共に
出入り口と窓のシャッターが、同時に全て閉じられる
無力な生徒達が、銃持ちのテロリストと共に箱詰めにされた瞬間だった
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1611人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
檸檬 - めちゃくちゃ面白いじゃないですか。返してください、私の腹筋（）。番外編で夜中なのに「ゲルテェェェェェェェ！（感涙）」って叫んじゃいました。 (2021年5月23日 1時) (
レス) id: 1448aeacc9 (このIDを非表示/違反報告)
bh(プロフ) - 最近更新が多くて嬉しいです。ありがとうございます。これからも応援しております。 (2019年10月14日 1時) (レス) id: c595f3c6d5 (このIDを非表示/違反報告)
ホタテおいしぃ - 熱い展開になってきましたね！ (2019年10月5日 11時) (レス) id: 4b45e1db41 (このIDを非表示/違反報告)
nia(プロフ) - 更新待ってました！！！ (2019年9月29日 21時) (レス) id: dcff59daa3 (このIDを非表示/違反報告)
るるりぃ - ココラさんと同じく何故か胸が苦しくて・・医務室から逃げる場面から涙が出ました。更新頑張ってくださいね！みたら士さん！ (2019年8月28日 23時) (レス) id: 4b45e1db41 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
