誇り高きイストワール 【番外編 百六十六通目】 ページ17
「宴……？何の話だ」
威厳のあるトーンで発された、グルさんの言葉
重圧で思わず息を呑んだが、ゲルテは何も気にしないように背筋を伸ばし、一心にグルさんを見る
「私の独断で、勝手に用意させていただきました！」
「……は？」
何故──そう問おうとしたグルさんの言葉はかき消される
なぜなら、総統閣下たる彼の言葉を聞くことなく、ゲルテが室内に押し入り──私のもとまでやってきたから
私自身、彼女の行動理由がわからない
「A様、立ってください」
そう言いつつ、無理矢理に私を起立させるゲルテ
他幹部が訝しげな目で舐めるように見て、ゲルテを睨んでいるのが察せる
しかし張本人は──自身より身分が上のものがつどっているのにもかかわらず──構う様子すら見せることはなく
「それじゃ！」
というと、私のローブのチャックを一気に外した
「なんっ………えぇぇ」
どさりと落ちた、重量のあるローブ
我が身が軽くなった──というのは別の理由で、私は皆の視線から隠れるように、ゲルテの背後に回った
私の服装が、いつものそれではないから
なんとなく、着ているだけで心が踊った宴会用ワンピース
藍色のそれに施されたレースは繊細に、青い薔薇を刻んでいた
すべてをゲルテに託した結果、選ばれたこの服
まさかこのようにお披露目することになるとは思っておらず、膝ほどもある丈でも恥ずかしく感じる
皆が目を剥いている中、ゲルテははきはきと──しかしどことなく震えた声で、言葉を紡いだ
「A様は、皆様と共に宴がしたくて……楽しんでいる皆様が、羨ましかったんです！」
「せっかく女性らしくおめかししたのに、そのまま終わらせるのはもったいない！」
「ですので私が、勝手ですが宴の準備を行わせていただきました！」
「独断専行。どんな処罰も受ける覚悟ですが、A様に楽しい時間を差し上げてください！」
深々と、直覚のお辞儀をするゲルテ
思わず涙ぐんでしまいそうになった
まさか私のメイドは、ここまで私のことを考えてくれていたとは
最強権力者の圧に怯えながらも、されど臆することなく接するほどに
私の為を思って、行動してくれるとは
「……皆、食堂へ移るぞ」
「え？」
思わず驚嘆の声が漏れる
しかしグルさんは訂正することなく、昼時より楽しそうに言った
「共に願おうではないか、この国の未来を！」
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檸檬 - めちゃくちゃ面白いじゃないですか。返してください、私の腹筋（）。番外編で夜中なのに「ゲルテェェェェェェェ！（感涙）」って叫んじゃいました。 (2021年5月23日 1時) (
レス) id: 1448aeacc9 (このIDを非表示/違反報告)
bh(プロフ) - 最近更新が多くて嬉しいです。ありがとうございます。これからも応援しております。 (2019年10月14日 1時) (レス) id: c595f3c6d5 (このIDを非表示/違反報告)
ホタテおいしぃ - 熱い展開になってきましたね！ (2019年10月5日 11時) (レス) id: 4b45e1db41 (このIDを非表示/違反報告)
nia(プロフ) - 更新待ってました！！！ (2019年9月29日 21時) (レス) id: dcff59daa3 (このIDを非表示/違反報告)
るるりぃ - ココラさんと同じく何故か胸が苦しくて・・医務室から逃げる場面から涙が出ました。更新頑張ってくださいね！みたら士さん！ (2019年8月28日 23時) (レス) id: 4b45e1db41 (このIDを非表示/違反報告)
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