宣戦布告 ページ9
「覚悟は出来てるって顔してる」
「まあ当たり前っすよ、覚悟してきてるんで」
「へえ…意外だったな」
人にエスコートとか言っておいて、意外とはなんなんだこの人。
俺は、野草のテーブル席で五条さんと向かい合って座っていた。
そして、カウンターの奥では、仕事をするフリをしながら、みもざ伯父さんが俺たちの会話に聞き耳を立てている。
「全部聞いたんだ、これ以上踏み込ませてもらう。…それに、俺にはマブたちもいるしな」
「あの写真に写ってたサークルメンバー、全員呪術師なんだね」
「ああ、そうらしい」
「なるほどねえ」と呟いて、五条さんは少し考え込んだ。
そして、人差し指を立てて、にっこりと笑い、俺を見た。
「つ・ま・りー………今のところ、呪術界のことを知りたいからっていう理由で妥協するだけだけど、とりあえず僕の彼女になってくれるってことでいい?」
「ブッ」
俺は伯父さんがサービスで渡してくれていたカフェモカを、勢いよく吹き出した。
「え、違うの?」
テーブルを拭いている俺にそう首を傾げながら問いかけてくる五条さんに、「いや、そうですけど……」ともごもご返す。
そして、大きく深呼吸して一度落ち着いてから五条さんのことを、ニヤリと笑いながら見つめた。
「五条さん、宣戦布告してやるよ。
もし本気で俺が好きなら、妥協で付き合う俺のこと、落としてみろ」
生意気すぎる口の聞き方なのは分かっている。
一歩間違えたらやばいってことだって分かっている。
けど、もし、これで五条さんが意地になってくれたら……
妹を助ける機会が、生まれる可能性はある。
俺の言葉にキョトンとしていた五条さんは、ふと俺にニヤリと笑い返してきて、
「上等」
馬鹿低い声で、そう一言口にしたのだった。
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作者名:ジンジャエール | 作成日時:2021年5月9日 8時