鏡三枚目 ページ3
｢で、何があったのかな｣
勿論無理には聞かないけどね、なんて付け加えられた一応の建前に、膝を抱える腕の力が思わず強まる。
何が、なんて聞かれても、そんな、何って程の事じゃないから。
｢急に、声、かけられて…。それで、髪にごみがついてますよって、言われて……いきなり触るのは不躾だからって、鏡を差し出されて、振り払っ、ちゃった……………｣
｢あー、成程｣
｢興味無さそう…｣
｢あるある、ばっちりあるよ｣
先程よりはつっかえずに先生へ文句を言うと、彼は消毒液を手に、私の目の前へと座り込んだ。
｢ほら、手、出して｣
｢………ん…｣
おずおずと手を差し出せば、ツムル先生はぽんっと躊躇なしに私の手へと消毒液を塗ってきた。
痛みに顔を歪めたが、先生はそんなことも気にせずにクルクルと包帯を巻き始める。
包帯に包まれて見えなくなっている皮膚を見ながら、私のコンプレックスもこうなればいいのになぁ、なんてぼうっと思った。
｢鏡は嫌い？｣
｢大嫌い｣
｢それはなんで？｣
｢私の顔が見えるから｣
｢どうして顔を見たくないの？｣
｢気持ち悪いから。中途半端だから｣
｢どうしてそう思ったの？｣
｢主観。もっと可愛ければ話しかけられないし、もっと可愛くなければ興味を持たれないから、今の顔が嫌｣
｢今日はどう？｣
｢今日も嫌い｣
｢そっか｣
毎日のようにツムル先生と繰り返している問答。
今日はなぜだかいつもより惨めに思えて、目尻に涙が浮かんだ。
自分の顔が嫌いだ。
周りから中途半端に目を付けられる顔が。
どうして、どうしてこの顔に生まれてきたのだろうか。
どうして、他の子みたいに上手に生きられないのだろうか。
｢生まれてこなきゃよかった｣
ぽつりと漏れた本音に、ツムル先生がぴくりと反応したのがわかる。
あ、やってしまったな。なんて、また他人事のように考えた。
そんなこと言わないでよ、と言われるんだろうなと身構えたが、以外にも、先生から返ってきたのは、｢そっか｣という短い一言だけだった。
何故かそれに、酷く安心した。
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ジンジャエール(プロフ) - ngさん» ありがとうございます！😌✨また気が向いた時にゆるゆると更新しようと思いますのでお待ち下されば嬉しいです…！😌 (6月4日 22時) (
レス) id: 312345e99c (このIDを非表示/違反報告)
ng(プロフ) - とても面白かったです！続きが欲しいです… (5月30日 1時) (レス) @page4 id: 48a8bb30b0 (このIDを非表示/違反報告)
ジンジャエール(プロフ) - 上の下が羨ましいブスさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます！病み病み夢主ちゃん初めて書くので不安でしたが、お楽しみ頂けているようでなによりです…！ (2023年2月9日 20時) (レス) @page4 id: 312345e99c (このIDを非表示/違反報告)
上の下が羨ましいブス - なんかめっちゃなんか好きです！(語彙力皆無) (2023年2月9日 19時) (レス) @page4 id: 86657072a9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ジンジャエール | 作成日時：2023年2月7日 23時
