25.期待と虚無と ページ26
目の前に広がるのは見覚えのある空間で、
一人暮らしを始めてから毎日見ている天井がそこにあった。
カーテンを開くと白み始めた空と早起きな鳥の鳴き声が聞こえる。
時計は午前5時を指していて、二度寝をするには少し足りない。
「…散歩でも行こっかな」
服を着替えて上着を羽織り、家を出る。
帰りはコーヒーでも買って帰ろう。
そう思いながら、近くの少し大きめな公園までやって来た。
「………」
そっと、彼が触れようとしていた頬に触れた。
わかってる。
あの夢はあくまで私の願望で成り立ってるんだ。
大きなプロジェクトだって、ツアーをしている事を私が知ったから出てきたんだろうし。
そうでなきゃ、アイドルをしているミンギュくんがあんな事を私なんかに言うはずがない。
『Aに癒してほしいな』
なんて私に都合の良い夢なんだろう。
ミンギュくん、ごめんなさい。
現実のあなたはあんなに皆に愛し愛されているのに。
私はあなたを独り占め出来るんじゃないかと思ってしまった。
あなたが私に触れたいと思う気持ちがあるんじゃないかと、目が醒める直前の妄想で思ってしまった。
成人しているのに、夢にまで憧れた期待を持ってしまうだなんて…
「今日はブラックにしよう…」
甘い夢から醒めた現実の虚無感には、
甘いコーヒーじゃ、辛すぎる。
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作者名:chuka | 作成日時:2022年5月6日 12時